妊娠子宮頚部の変化に関する研究
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概要
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妊娠子宮頚部の硬度を客観的に評価するため,組織弾性(E)の指標として超音波音速(V,V∝^<1/2>)をsingaround法により測定した.またこの組織弾性を規定すると考えられる子宮頚部結合組織のコラーゲン含有量について,Masson染色標本を顕微鏡下に画像解析を行い,結合組織間質に占める膠原線維の面積率として客観的に計測してみた.1.ヒト子宮頚部超音波音速頚部測定用プロープを作成し,singaround 音速測定装置により非妊対象12例,妊娠例171例についてのべ355回の計測を行った結果,非妊対照1587.5±6.0m/sec,妊娠初期1579.8±6.1m/sec、妊娠中期1577.8±6.5m/sec,妊娠末期1572.8±5.4m/secであった.このような妊娠時の頚部音速低下は音速と弾性率との関係から組織弾性低下を表現するものである.2.画像処理による子宮頚部膠原線維量ヒト子宮頚部に関しては,子宮全摘例から非妊娠対照,妊娠初期,妊娠末期の膠原線維をMasson染色し,顕微鏡像を入力し画像処理により面積率を求めた.頚部結合組織間質における膠原線維の面積率は対照68.6±20.2%,妊娠初期46.3±14.0%,妊娠末期29.1±10.3%となり妊娠末期に減少することを定量的に把握し得た.一方ラット子宮頚部について,妊娠10, 14, 18, 19, 20, 21日齢のものを同様の方法で画像処理したところ,対照53.5±24.7%に対して妊娠18日目まではほとんど変動を認めないが,19日目より減少し21日目には31.1±2.1%と膠原線維の著明な減少を認めた.以上のごとく新しい技法を用いた組織計量診断により妊娠による子宮頚部の変化を数量的に評価し得た.
- 1987-04-01