妊娠末期における前回帝切瘢痕の性状に関する超音波断層診断法の価値について
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概要
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前回子宮頚下部切開帝切をうけた再妊娠例の妊娠管理及び分娩様式の決定上,帝切瘢痕の性状を分娩開始前に診断することは極めて重要である.今回我々は本診断に関する超音波断層法の価値について検討し,以下の結果を得た.1.帝切瘢痕が局在する子宮頚前壁の厚さを超音波断層法により正確に測定することは困難であった.そこで我々は,膀胱壁-胎児表面間隔(以下B-F間隔と略す)を観察,計測した.2.対照群として,帝切をうけたことのない妊婦24例(未産婦13例,経産婦11例)に対し,妊娠34週から40週の間に超音波断層法により各症例の最小B-F間隔を測定したところ,4mm未満の例はなく,21例(87.5%)は4〜7mmに分布していた.3.昭和56年4月1日から同年11月30日までの間に当院で分娩を終了した前回帝切妊婦22例中1例を除いた21例に対し,妊娠34週から42週の間に超音波断層法によりB-F間隔を観察し,その形態と分娩様式及び再帝切時の帝切瘢痕の性状との対比を行なった.その結果,(イ)経膣分娩例6例の各々の最小B-F間隔は全例5〜7mmであった.(ロ)再帝切を行なつた15例はすべて子宮頚下部横切開帝切を前回うけており,完全離開例はなかったが不完全離開例が3例あり,そのB-F間隔の形態は3例とも膀胱壁エコーと児頭壁エコーとが融合した状態であった.(ハ)中程度の非薄を一部ないし全体に認めた例は4例で,最小B-F間隔は2例が3mmで,1例が4mmで,他1例は5mmであった.(ニ)他,帝切瘢痕の罪薄が認められなかった8例では,6例が最小B-F間隔は4〜7mmで,2例1は膀胱壁エコーが不明瞭ないしその全体像が得られず,最小B-F間隔は測定不能であった.4.以上の結果より本診断法において,B-F間隔が膀胱壁エコーと胎児表面エコーめ融合した形態である場合、不完全離開と診断でき,最小B-F間隔が3mm以下の場合,中程度の菲薄を疑うことができた.しかし,局在性の中程度の菲薄の検出ないし菲薄の否定診断には問題を有していた.
- 1982-06-01
著者
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