妊娠ラットにおける鉄欠乏性貧血およびその母仔への影響に関する実験的研究
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概要
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妊娠は母体に種汝の影響を与えるが,そのひとつに鉄欠乏に陥る傾向が指摘されている.この鉄欠乏の胎児への影響については明確な結論は出ていない.そこで著者は実験的にラットを鉄欠乏にさせ,その母仔への影響を検討した.非妊群,正常妊娠群には通常の固型飼料を与え,除鉄妊娠群には交尾翌日より除鉄飼料と蒸留水にて飼育した。母体赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリット,血清鉄値は妊娠が進むにつれて減少し,妊娠21日では非妊時に比ベヘモグロピソ以外は有意に低値であった.除鉄妊娠21日では正常妊娠21日に比べ,特にヘモグロビンが低値をとった.また母体肝臓内貯蔵鉄をBruckmann-Zondek法で非ヘミン鉄を測る事により検討すると,非妊時に比べ有意差をもって半減しており,除鉄群では正常妊娠群以上に減少を認めた.次に妊娠中の動的た鉄の動きをみるため,フェロカイネティクス法を施行した.従来の方法とは異なりキレート剤NTAを用い^<59>Feを錯塩の型にし,血清中トランスフェリンヘ特異的に^<59>Feを結合したもので行った.血漿鉄消失率T(1/2)は,非妊群に比べ妊娠群では1/4に有意に短縮しており,さらに各臓器への取り込みでは非妊群に比べ妊娠群は非常に低値であった.しかし胎仔への移行は24時間後には70〜80%にも達した.妊娠21日の胎仔について正常群,除鉄群の違いをみるとヘモグロビン,ヘマトクリット,血清鉄共に除鉄群に低値であり,胎盤及び胎仔肝臓内非ヘミン鉄でも除鉄群は低値であった.胎仔体重は正常群5.2gに対し除鉄群は4.5gと有意に低体重を示した。以上の事より,ラットでは妊娠が進むにつれ貧血傾向になり,貯蔵鉄も減少し,血漿鉄消失率は急速である事から,妊娠中母体は他の栄養素と同様に鉄に関しても優先的に胎仔へ鉄を供給していると考えられる.そして妊娠中除鉄にすれば,その影響は母体に比し胎仔に強くみられ,子宮内発育遅延等の著明な障害が発生した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-01-01
著者
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