妊娠中毒症におけるMineralocorticoidsとRenin-Angiotensin 動態に関する研究
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概要
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妊娠中毒症の病態を理解するため,母体・胎児・胎盤を一体として,このunit内における一連のmineralocorticoids(Mcds)とrenin-angiotgnsin系との動態を求めた上,その各々の関連性についても検討し,以下の成績を収めた. 1.正常分娩時の母体未梢血と臍帯血とにおけるdeoxycorticosterone(DOC-cortcosterone(B)-18-hydroxy-corticosteroe(180H-B)-aldosteroe(Ald)濃度のうち,Bと180H-Bとのそれでは母体血がDOCとAldとのそれでは臍帯血が高く,また母児双方の18OH-B,Ald濃度間に一定の相関性があることを認めた.純粋妊娠中毒症,とりわけ高血圧型では,母体血Mcds濃度はいずれも減少するが,臍帯血ではBが高く,18OH-B,Aldのそれに有意の増減がなく臍帯血ではB,18OH-B,Ald濃度間に各々一定の相関性があることを認めた.2.正常分娩時のplasma renin activity (PRA),angiotensin-II (A-I, -II)濃度はいずれも臍帯血で,胎盤後血で高く,妊娠有毒症では母体血PAの減少が著名であり,胎盤後血でPRA, A-Iの有意の増加を認めた.3.重傷妊娠中毒症のうち高血圧型では,母体血の18OH-B, Aldが低値,臍帯血のそれが高値となり,この両者間に対蹠的なパターンがあることを認めた.4.母体で高Na血症を見る場合には,母体血のMcds濃度はいずれも低いが,臍帯血のB,18OH-Bのそれは高くAldはは両者でほぼ同一値となることを認めた.またこの傾向は臍帯動脈血のKが高値となるもので一層著名となり,極小未熟児出産例では母児いずれの濃度も高値となった,したがって,妊娠中毒症とりわけ高血圧型では,母体のrenin-angiotensin-Ald系が抑御され,胎児のそれが亢進することになる.すなわち妊娠時,特に中毒症では胎盤を介するrenin-angiotensinと水・電解質とが母児双方に対して各々異なった指向性を有しており,母体に高血圧あるいは電解質平衡の乱れがあっても,胎児はその影響を受けることなく,己れ自身で調節する独自の機構を獲得しているものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-03-01