卵巣胚細胞系腫瘍の臨床病理学的研究 : 特に予後不良因子のEmbryonal Carcinoma(樋口)を中心に
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概要
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胚細胞系腫瘍の中,未分化灰細胞腫,未熟奇形腫,Embryonal Ca.の315例を対象とし,臨床病理学的にそれらの本質的正確を対比検討した.また,embryonal ca. A群3例についての微細構造を観察すると共に,組織発生学的な比較観察のため,妊娠3ヵ月の人の胎芽のYolk sacと,Ratの胎盤を併せて検討した.臨床的にこれら腫瘍は,20才前後の若年者を中心に発生し,予後比較的良好から極めて悪性まであり,また各腫瘍の共在も認められ,特に予後不良因子はembryonal ca.の組織像の有無によると考えられた.embryonal ca.は光顕的にendodermal sinus pattern, reticular pattern, solid patternを呈するが,電顕的には同様の腫瘍細胞より構成されている.したがつてこれら組織像が同一の起源を有すると推測された.さらに,embryonal ca.は,電顕的にRat胎盤のendodermal sinusとは異なり,むしろ人Yolk sacのendodermal cellに類似性を認めた.以上の成績より,上記腫瘍の間には臨床的,機能的,形態的にも共存することなどからretrospectiveな観察ではあるけれども,胚細胞系腫瘍として推測させる一面を有することが明らかにされた.またembryonal ca.は基底膜をまだ形成しないような未分化な腫瘍細胞より構成され,いずれの方向にも分化し得る多潜能的性格を有する腫瘍と解釈できる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-11-01
著者
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