妊娠母体・胎児・新生児における甲状腺機能の研究
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概要
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妊娠・分娩・産褥時の母体及び胎児,新生児の甲状腺生理を解明するために,T3, T4, T3 uptake, TSH, free T3 index (FT3I), free T4 index (FT4I)などと共に,free T3 (FT3)およびfree T4 (FT4)の測定を行なつて次の成績をえた. 1) FT3Iは,妊娠時にもFT3と極めてよい相関を示したが,FT4IとFT4は妊娠時には一致した推移を示さなかつた.したがつて妊娠時の甲状腺機能の判定には,臨床的にはFT3Iを使用するのが妥当であると考えられる. 2) 妊娠により,T3, T4は2nd trimester以降は正常範囲の上限程度まで有意に増加したが,FT3は逆に有意に下降した.従つて,妊婦の甲状腺機能は2nd trimester以降はむしろ低下傾向にあると考えられる.また2nd trimester以降は分娩時までT4が増加するにかかわらずFT3/FT4の低下が見られることから,この時期にはT4からT3への転換が減少していると想像される.産褥1ヵ月では,T4は非妊婦の値と等しくなつたが,T3はなおやや高く,またFT3/FT4も高いことから,産褥期には特異な甲状腺ホルモンの末梢代謝が行われていると想像される.TSHは妊娠・分娩・産褥で不変であつた. 3) 妊娠末期胎児では,T4とFT4は成人と同じレベルにあつたが,T3とFT3は成人の1/2以下の低値であつた.TSHは,成人より高値であつた.このことから,胎児の甲状腺系はいわゆる高度のhypothyroidの状態であり,中枢ではそれへの対応としてTSHの分泌を促進していると考えられる.また〓帯動・静脈血の測定により,従来動物実験でいわれているのと同じく,ヒトでもTSH,甲状腺ホルモンは母体から胎児へは移行せず,胎児の甲状腺系は母体と独立して作動していることが確認された. 4) 新生児では,出生直前からT3は急速に増加し,2時間後には成人以上のレベルになつた.TSHも類似の急速な増加を示した,しかし,出生直後からの100%酸素吸入による観察から,出生直後のT3の増加には,TSHによるほか肺呼吸開始による組織酸素濃度の上昇が関係している可能性が強く示唆された.
- 1978-11-01
著者
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