電算機による分娩所要時間ならびに経過の予測に関する研究とその臨床応用
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概要
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分娩所要時間に関連する諸因子を多変量解析の手法を用いて解析し,分娩所要時間の推定式及び分娩遷延の早期判別式を求めた.その結果をon-line電算機に入力,分娩管理のシステムの一つとして臨床に応用し,その意義を検討した.陣発から児娩出までの経過時間を分娩所要時間とし,初産で24時間,経産で12時間超過したものを分娩遷延とした.自然分娩例1141例を対象に初産,経産,非遷延及び遷延に分け,18項目の臨床所見を変量として解析をすゝめた.まず非遷延及び遷延の変量間の平均値の差を検定した.次に因子分析により,分娩経過に影響を及ぼすと考えられる4つの因子を抽出した.即ち初診時の分娩進行状態,児をふくめての母体腹部の大きさ,年令・経産回数,児頭骨盤不適合である.この結果と臨床上の意義を考察し,妊娠週日,母体重,腹囲,陣発経過時間,陣痛発作間歇比,子宮口の開大,初経産別,子宮口唇の硬さ,下向部の高さの9変量を選び,林の数量化理論I類及びII類を用い,分娩所要時間の推定式及び分娩遷延の判別式を求めた.分娩所要時間の推定では,重相関係数0.81,1時間以内で24%,2時間以内で47%,3時間以内で65%の正診率であつた.分娩遷延と非遷延の判別では,初産が陣発経過時間6時間以内で66%と72%,経産が陣発経過時間3時間以内で75%と71%の正診率であつた.上記の推定式及び判別式をプログラムにし,on-line電算機の端末による分娩管理のシステムを開発した.上記9変量を入力すれば,分娩所要時間及び分娩遷延の判別結果が直ちに出力される.臨床応用では,142例の分娩所要時間の推定では1時間以内で25%,2時間以内で45%,3時間以内で53%の正診率であつた.又初産152例,経産141例の分娩遷延の判別では,遷延と非遷延で初産が64%と55%,経産が71%と62%の正診率であつた.臨床診断に比べ精度の向上がみられ,産科管理上有用性をもつと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-10-01
著者
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