子宮筋のDNA,RNA,蛋白質量の妊娠及び性ホルモンによる変化
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概要
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妊娠子宮の増大が子宮筋細胞の増殖によるか肥大によるものか,又は両者によるものかについては,いまだに解明されていない.今回筆者は,家兎子宮筋を用いて一細胞当り一定とされるDNAの測定を行ない同時に行つたRNAと総蛋白質量の測定結果から次の結果を得た. (1) 家兎子宮筋全湿重量は,妊娠によりほぼ直線的に増加し,妊娠末期では非妊娠時の約13.4倍となるが,産褥4日目では妊娠末期の約40%に減少する.Estrogen処理により,子宮重量は増加するが,Progesterone処理では変動は認められなかつた. (2) DNAの変化を全子宮筋で見ると妊娠初期に急増して2倍となり,子宮筋に含まれる細胞が2倍になつている.また去勢によりDNAに変化はないが,Estrogenにより2倍となる.産褥4日目には細胞数は妊娠末期の約50%に減少する. (3) RNA,蛋白質量は妊娠初期に非妊時の約2倍,中期に5.7倍,末期は8.2〜9.5倍と直線的に増加する.産褥期の子宮筋重量の変化は主として細胞の減少に由来すると考えられる. (4) DNA当りのRNA,蛋白質量の変化は,両者共に妊娠初期に約1.5倍となり中期には約3倍に末期には約3.5倍となる.去勢により細胞1ヶ当りの蛋白質及びRNAは非妊時より減少するがEstrogen処理により妊娠10日と同様な値を示す.併しProgesterone処理では変化は認められなかつた. (5) 子宮各部の単位重量当りのDNA量の変化は,子宮体部,頚部共に妊娠中期には非妊時の1/5となり,そのまま妊娠末期に到つている.去勢により体部では細胞が萎縮するが頚部での変化は少ない. (6) 以上の事から妊娠による子宮重量の増加は妊娠前期には増殖が著明で中期以降には肥大によると考えられる.その際Progesteroneよりも,Estrogenの有する意義が大きいと推論される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-10-01
著者
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