妊婦における高脂血症に関する研究
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概要
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著者は正常経過をたどった妊婦のtriglyceride, total cholesterol, phospholipid, nonesteric fatty acidを週単位で測定してこれらの正常値の範囲を定めて以下の結論をえた. 1) triglyceride値,total cholesterol値,phospholipid値,nonesteric fatty acid値は妊娠経過とともに上昇した. 2) 晩期妊娠中毒症,糖尿病,糖尿病境界型,肥満を合併する妊婦では,それらの病態に一致して異常高脂血症をきたし,特にtriglyceride値が著明な高値を示した. 3) triglyceride値とtotal cholesterol値との相関性はr=0.77, y=0,95×-26.2で,代謝異常を合併するもののうち重症型に高triglyceride値を示した. 4) 脂質合成動態を検索するため50g oral glucose tolerance testを施行し,nonesteric fatty acidの減少曲線から検討すると,正常妊娠群では妊娠月数による下降度および下降巾には変化は認められなかった.肥満を合併する妊婦では下降度および下降巾が大きく,糖尿病,糖尿病境界型を合併する妊娠では下降度は緩慢で下降巾は小さく,晩期妊娠中毒症のそれでは下降度および下降巾は種々様々であった. 5) 50g oral glucose tolerance testの空腹時nonesteric fatty acid値-glucose負荷後30分nonesteric fatty acid値/空腹時nonesteric fatty acid値は妊娠中期に高値を示し,その妊娠月別推移は脂肪蓄積推移と一致した.晩期妊娠中毒症,糖尿病,糖尿病境界型,肥満を合併する妊婦のその値は,病態の程度とほぼ一致し,低値を示した. したがって,正常妊娠時の高脂血症は胎盤由来のホルモンによりturn overが上昇し,またpost heparin lipoprotein factorの低下を含む特異代謝が関与し,また,晩期妊娠中毒症,糖尿病,糖尿病境界型,肥満を合併する妊婦におけるそれは,代謝障害に基づく血清処理機能の異常によるものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-08-01