Toxoplasma oocystの感染母体と胎仔に関する実験的研究
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概要
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近年Toxoplasmaの感染源として猫より排泄されるoocystが注目されている.しかしoocystを用いた胎児感染実験の報告はみられない.そこでoocystを用い自然の感染経路に最も近い経口接種法で,感染が妊娠に与える影響,感染母体が胎児に与える影響,慢性不顕性感染母体からの胎児感染の可能性,従来行なわれているDT, HAによるTp抗体価の推移,Tp免疫抗体特にIgMの診断的有用性についてマウスを用いて実験した. 1. oocyst l.6×10^2個を経口接種したところ全例のマウスに感染が成立した.oocyst感染の母マウスでは対照の非感染母マウスに比べ流早死産および奇形の発生がみられ妊娠時期に近い感染群ほどその頻度が高い傾向がみられた.妊娠中期初感染群の母マウス15/17例(88.2%)に,亜慢性感染期の母マウス16/33例(48.5%)に垂直感染が成立した.過去にTp症児を出産した慢性不顕性感染の母マウス4/7例(57.1%)に垂直感染の再発を認めた. 2. 母マウスではDT抗体は感染の早期より陽性となつた.出産直後の仔においてはTp原虫の有無にかかわらずDT陽性を示した.母マウスではHA抗体はDT抗体に遅れて検出され長期間高い値が持続した.仔においては生後かなりの期間HA抗体は検出されず陰性を示すことが多かつた.妊娠中期感染群においては感染の3.5週目よりIgG, IgMが検出され始め,4.5週目には9/13例(69.2%)にIgMが検出された.Tp感染の時期や症状の有無にかかわりなくIgMが検出された母マウスからはTpが分離され,また垂直感染が成立した.その仔マウスの約半数にもIgMが検出された. 以上のマウスにおける成績よりTP oocystは強い感染力を有し妊婦に対しては高い頻度で異常産をひきおこすこと,また慢性不顕性婦人からの先天性Tp症児の出生の危険性が示唆された.Tp免疫グロブリンの分画,特にIgMの検索はTp胎内感染の診断に有用であることが証明された.
- 1977-06-01
著者
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