子宮内膜症の臨床病理学的知見補遺 : 特に子宮腺筋症の発生過程に関して
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概要
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子宮内膜症103例(手術後診断)について発現部位別に分類し,特にAdenomyosis (Aと略)について病理組織学的に観察した結果,次の如き成績を得た.なお卵巣子宮内膜症(Oと略),骨盤腹膜内膜症(Pと略)とした. 1. 子宮内膜症の第1の好発部位は子宮体壁でありA単独発現の場合とOとP合併発現の場合とがあり,これら両者が子宮内膜症の発現型として最も多い. 2. しかしA発現を欠くOやP発現型も存在しこの場合両者の合併が著しく多く,OやPの単独発現は少なく,特にPはむしろAやOの発現と密接に関係していると思われる. 3. 子宮内膜症は性成熟期,特にその後半の疾患であるが,Aを欠くOやPの発現は若年令層に多く,本症の大多数に発現型と発現年令上の差が認められる. 4. 子宮内膜症の症状は,月経痛,月経困難が特徴的ではあるが,varietyに富んでおり,A単独は過多月経,Aを欠くO, P群は下腹痛,不正出血が多いが類似性が強い. 5. 特にOやPを認める例では不妊が認められるが,本症が不妊の原因であることのほかに本症発生の原因として性機能異常を注目する必要があると考える. 6. 子宮腺筋症の約40%に筋腫を併発しているが,子宮の大きさは,むしろ本症の病変部の大きさに左右されていることが多いが筋腫発生は本症発生に誘発された付随的変化である可能性がある. 7. Aの病変は肉眼的に子宮腔との連続性が顕著で非連続性に見える場合でも,本症発生後に生ずる周辺筋組織の増殖のため粉飾された可能性が強い. 8. 初期のAでは内膜基底層が直接筋層内に向い増殖する像を認めるが,好リンパ管性に間接に壁内に侵入増殖して発生する傾向が著しくこれがAの組織模様の本質的な原因であると思われる.以上の結果から発生過程については,内膜基底層の好リンパ管性異所増殖によると考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-06-01