分娩周辺における糖脂質代謝の変動
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
分娩時における子宮収縮に伴う母体の全身運動は,母児共にかなりのエネルギーの消費を要するものと考えられる.今回は生化学的に分娩第1期より第3期に至るまでの分娩周辺における母体の糖及び脂質代謝を経時的に測定することにより,エネルギー代謝を検討し,正常な経腟分娩と選択的帝王切開分娩の差を母児について観察した,測定方法は妊娠10ヵ月で陣痛発来時の妊婦を対象として,陣痛開始から分娩終了2時間迄経時的に採血し,グリセライド,コレステロール,燐脂質,遊離脂肪酸,遊離グリセロールと血糖,乳酸を測定した.なお各脂質については構成脂酸の変動も検討した.正常経腟分娩では,母体血の血糖値は5時間以前値が72mg/dlで,分娩時には103mg/dlと約29%の上昇を示し,分娩後1時間で67.8mg/dlと分娩前5時間以前の値に下つた.乳酸値は5時間以前値は10.8mg/dlだつたが,分娩時41mg/dlと約4倍の急激な上昇を示し,2時間後にはほぼ5時間以前の値に下つた.一方選択的帝王切開分娩では全経過を通じて血糖及び乳酸値の変化は認められなかつた.血清脂質について正常経腟分娩では血清コレステロール,燐脂質は分娩全経過を通じて変動はみられなかつたが,エネルギー代謝に直接関係が深いトリグリセライド値は分娩5時間以前値が205mg/dlで以後10%の軽度の上昇で分娩時迄持続し,分娩30分後では5時間以前の値にもどつた.遊離脂肪酸値は,分娩5時間以前値は593μEq/lで分娩時は993μEq/lと67.5%の上昇を示し,分娩後1時間で急速に下降し5時間以前の値にもどつた.また遊離グリセロール値は5時間以前値が1.48mg/dlで分娩時には2.24と51.4%の上昇を示し,以後次第に下降して,分娩2時間後にほぼ5時間以前の値に下つた.一方選択的帝王切開分娩はその差がほとんどみられなかつた.つぎに〓帯血について経腟分娩と帝王切開を比較検討してみたものでは乳酸値のみ選択的帝王切開分娩の11mg/dlに対して正常経腟分娩が25mg/dlと127%の増加を示したが,他の血糖ならびに全ての血清脂質において両者に差を認めなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-06-01
著者
関連論文
- Fetal Distress における臍帯血中脂質の変動
- 195. 妊婦における高脂血症の成因 : リポ蛋白リパーゼについて
- 妊婦における血清脂質の日内変動
- 90. 妊婦の高脂血症の成因について
- 110. 婦人団体の自主的管理による「子宮癌手帳」による新しい子宮癌検診について ( 第III群 悪性腫瘍)
- 分娩周辺における糖脂質代謝の変動
- 103. 分娩周辺における糖脂質代謝の変動 (第8群 妊娠・分娩・産褥 (86〜117))