産婦人科領域悪性腫瘍の化学療法に関する臨床的研究 : 特に,制癌剤効果の増強策と副作用軽減のための投与法の検討
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概要
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子宮癌と悪性卵巣腫瘍を対象として,MMC, BLM, 5-FU, FT-207の4剤につき,各種投与法を用いて,血清,腹水,癌組織への移行濃度を測定し,"如何にして有効組織内濃度を維持するか,如何にして副作用を軽減させるか", Pharmakokineticsの立場から検討し,制癌剤の投与法,その併用法,組合せ法による制癌効果の増強策を追求した. 1) 制癌剤の血中への移行濃度並びに持続時間は,MMCでは1 shot 1回投与量6mg以上の間歇静注法が,5-FUでは1回投与量250mg以上の1 shot静注に次いで,持続動注と1回300mg連日経口投与がすぐれ,BLMでは1 shot動・静注においては,dose dependentな傾向が強いが時間の推移と共に持続動注と、ほゞ同じ傾向を示し,油性BLMの子宮頚部局注では移行はやゝ遅いが,有効濃度の持続性があり,FT-207では経口及び静注法より,直腸内投与の方が濃度,持続性の画面で優れていた。また各種制癌剤の腫瘍内投与における血中移行は,やゝ遅れるが長時間にわたる有効血中濃度の維持が可能であつた.2) 癌組織への移行は全身投与の場合には薬剤別並びに投与法別による署明な差は認め難いが,BLM特に油性BLMの子宮頚部局注では,癌組織及びリンパ節への移行が他の投与法に比較して最もよく,FT-207では直腸内投与が優れ,また肝転移への効果も認められた.3) 腹水への移行は,MMC, 5-FU, BLMの全身投与では有効濃度の達成,維持が困難であり,FT-207でもほゞ同様であつたが,経口及び静注法に比較して,直腸内投与においてやゝ優れている傾向がみられた.MMCと5-FUの腫瘍内注入では,共に投与後4〜6時間にわたり有効濃度の維持が可能であり,BLMの子宮頚部局注並びに腹腔内投与においても,全身投与よりも良好な腹水内移行がみられた.4) 以上各種制癌剤の血中,腹水,組織並びに腫瘍内濃度の結果より,有効血中濃度の維持,有効組織内濃度の達成・維持,更には病巣内での制癌効果と副作用の軽減の為の薬剤別投与法及び投与形式の組合せ方策,例えば腺癌に対する5-FU経口投与とFT-207直腸内投与;FT-207経口投与とMMC大量間歇投与或いは腫瘍内注入;扁平上皮癌に対する油性BLMの単独子宮頚部局注法で他の投与法の併用を必要としない事などを明らかにしえた.また各種制癌剤の腫瘍内注入は,癌組織内の有効濃度の維持ばかりでなく,副作用の軽減という意味からも今後積極的に癌化学弯法の投与法として導入すべきものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-05-01
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