PCB汚染の生物学的モニタリング : 母乳および母体血中の濃度
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概要
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1972年11月より1976年7月までに分娩せる産婦183名およびその児を対象として,PCB汚染のbiological monitoringの目的から,母乳,母体血,〓帯血,胎盤,胎脂についてPCBの濃度を測定し,以下の結果を得た. 1) 母乳341の全検体より,最高0.15ppm,平均0.025ppmのPCBが検出された. 2) 初乳後のPCB濃度の経時的変動をみると,産後1ヵ月以降の成乳が有意差をもつて初乳に比べ高値を示した.また1972年と1975年における同一地域の産婦の初乳中の平均PCB濃度は,それぞれ0.024ppmおよび0.022ppmで,有意差を認めなかつた. 3) 母乳中のPCB濃度は,海浜の都市住宅地域(千葉県市川市)と内陸の農村地域(栃木県宇都宮市)との間に有意差があり,後者において低値を示した. 4) 母乳中のPCB濃度は,初産群に比して経産群では低値を示したが,母親の年令との間には相関を認めなかつた. 5) 分娩時体重65kg以上の産婦の母乳中のPCB濃度は,65kg未満の産婦のそれに比して低値を示した. 6) 〓帯血中のPCB濃度は,平均4.5ppbで,母体血中のPCB濃度との相関係数は0.509を示し,かなり密接な関係があると思われる. 7) 胎盤中のPCB濃度は2ppb以下,胎脂中にはその存在を認めなかつた. 8) 母体自身およびその児へのPCBの影響を監視するために母乳は良い指標であり,また,生下時の児のPCB濃度を推定するためには母体の血中濃度についてのbiological monitoringが役立つと思われる. 9) 母乳中のPCB濃度は最高0.15ppmを示したが,少なくともこの濃度以下ではPCBの直接の影響と思われる所見を認められない.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-04-01