鶏胚における黄体ホルモンの催心奇形性に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
鶏胚発生初期(Somite 12-18, 32-40h頃)に有窓法により黄体ホルモンを注入し,心奇形の発生頻度につき対照群と比較検討した. 実験方法は,受精卵について卵白のアルブミンを一定量(注入量と同量)除去し,その卵白欠損部内に薬物を注入し,Incubatorに保存し,10日目まで発育した卵につき,心奇形の有無を実体顕微鏡下に検索した. 使用薬剤は,持続性黄体ホルモン1ml中にカプロン酸ヒドロオキシプロゲステロン125mgとプロゲステロン20mgとの混合したもので,その0.1〜0.02mlすなわち14.5mgより2.9mgと注入量を変えて観察した. 対照群は,無処置群,アルブミン除去群,生食水注入群,卵胞ホルモン注入群,および黄体ホルモンの溶媒である油剤注入群などである. 実験成績は,黄体ホルモン0.1ml (14.5mg)注入群では50%,0.05ml (7.3mg)注入群では20%,0.025ml (3.6mg)注入群では21%,0.02ml (2.9mg)注入群では23%に心奇形の発生をみた.これら心奇形の種類は,心室中隔欠損が13例中7例(54%)を占め,心房中隔欠損と大血管転位が2例ずつであり,その他2例は両大血管右室起始で共に心室中隔欠損をともなつていた. 対照群では,無処置群,アルブミン除去群,生食水注入群,卵胞ホルモン注入群では心奇形の発生はみとめられていないが,油剤注入群で観察できた9例中1例に心室中隔欠損をみとめた.死亡例を除いた観察例と心奇形との関係については,黄体ホルモン注入群と対照群とでの心奇形発生率は危険率1%以下で有意差がみとめられている. 以上の事実より,その機序については今後の研究にまたねばならないが,黄体ホルモンが催奇性,特に心奇形の発生に関与することは推察できる.
- 1977-02-01