MRIによる妊婦骨盤計測の試み : X線計測との比較
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概要
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MRIによる妊婦骨盤計測(magnetic resonance pelvimetry: MRP)を導入し, その有用性を評価すると共に従来のX線骨盤計測法(X-ray pelvimetry : X-P)との比較を行った.まず基礎実験として合成樹脂製骨盤模型を用いてMRIとX線による撮像および計測を行い実測値と比較した.その結果, いずれの計測値も実測値との誤差は3mm以内であり, 計測の精度は満足できるものであった.臨床での検討では, まず5名の非妊婦(婦人科腫瘍患者)の協力を得てMRPとX-Pの両者を行い, その計測値を比較した.続いて32名の妊婦(骨盤位27名, 頭位5名)を対象としてMRPを実施した.そのうち27名については同時期にX-Pも施行して両者の計測値を比較すると共に, 経膣分娩の適否を判定した.妊婦でMRPとX-Pの計測値を比較したところ, 入口部前後径および横径の計測値の差はいずれも3%以内であり誤差範囲と考えられた.しかし峡部前後径は27名中25名においてX-PよりもMRPの計測値のほうが小さくなり, 平均1cmの較差が認められた(p<0.001).この傾向は非妊婦における検討でも同様であった.MRPは主に仰臥位で, X-P(骨盤側面像)は立位で撮影されており, 上記の較差は体位による骨盤内径の変動を反映しているものと考えられた.分娩台での砕石位又は坐位の姿勢では, 産婦の骨盤出口部の状態はMRP施行時の状態に近いと考えられる.骨盤位27名中22名に経膣分娩を試み, 18名(82%)が成功した.頭位5名中4名はMRPで児頭骨盤不均衡が疑われ, うち3名が帝王切開となった.さらに症例を蓄積し適切な基準を設定すれば, 多くの骨盤位症例でMRPによる経膣分娩の適否の判定が可能になると考えられる.MRPは胎児の放射線被曝を伴わずに明瞭な画像と正確な計測値が得られることから, 機器の普及に伴って国内でも臨床応用が広がることが期待される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2000-03-01
著者
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