ラット胎仔脳におけるglycogen代謝調節
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠ラットを用い, 妊娠17日, 妊娠19日および妊娠21日に開腹して胎仔をとりだし, 胎仔脳 glycogen量, glycogen synthase活性および glycogen phosphorylase活性を測定した. 経胎盤的に虚血負荷を加え, 胎仔脳 glycogen量, glycogen synthase活性および glycogen phosphorylase活性の変化を求め, さらに胎仔脳における glycogenの分布を光顕的に調べ以下の成績を得た. 1. ラット胎仔脳における glycogenは脈絡叢に多く, 脳室周囲および大脳半球表層にも他の部位に比べ多く存在する傾向を認めた. 2. 脳単位湿重量当たりの glycogenは胎齢19日に peakを示し, それ以後胎仔の成熟とともに減少傾向を示した. 3. 脳glycogen synthase a型については, 胎齢による変化はみられなかつた. 4. 脳glycogen phosphorylase活性は, a型, a+b型とも胎齢がすすむにしたがい増加した. 5. 胎仔に虚血負荷を加えると, 胎齢17日, 胎齢19日で脳 glycogen含量の低下, glycogen phosphorylase a型活性の上昇がみられた. 以上より, ラット胎仔脳において glycogenは, 低酸素状態における脳出血の好発部位と一致して存在することが示唆された. また, 脳のglycogen量の調節は分解系に依存していることが示唆された. さらにそれらは脳の成熟に関与し, 低酸素状態に陥つたときエネルギー源となり得ることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-11-01