未固定組織凍結法による妊娠中毒症胎盤絨毛の毛細血管内皮細胞の超微形態学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠中毒症胎盤の胎児毛細血管内皮細胞の病態生理を検討する目的で, 正常妊娠5例と重症妊娠中毒症 (H型) 10例の娩出胎盤を使用し, 未固定組織凍結法・凍結置換法にて処理した絨毛の胎盤関門部を透過型電子顕微鏡を使つて検索した. また, カテコールアミン溶液にincubateした正常妊娠絨毛組織の毛細血管内皮細胞の運動性を観察し, 比較検討した. 1) 正常妊娠胎盤では, 毛細血管内皮細胞はほぼ一様の厚さを有し, 小器官は細胞質内に均等に分布していた. また, カテコールアミン溶液に incubateすると, 6nmの直径を有するアクチンと思われる filamentが細胞質内に多量に析出し, その部の細胞質がこぶ状に血管内腔に向かつて突出していた. 2) 妊娠中毒症胎盤では, 毛細血管内皮細胞の厚さは一様でなく, 同一血管内の隣合わせの内皮細胞でも同じ内皮細胞でも部位によつては凹凸不整で, その細胞質の突出は不規則であつた. また内皮細胞内の小器官の分布は均等ではなく, 10nmの直径を有する microfilamentが密な束状に増生していた. その増生部はまず血管内腔側に発生し, 増加するとその部の小器官が消失し結合織側にまで細胞質全体にわたり占拠するようになつていた. とくに子宮内胎児発育遅延(以下IUGR)を伴つた妊娠中毒症症例の胎盤では, その増生部が広範におよんだ内皮細胞を有する毛細血管が増加し, その毛細血管はあたかも動きのない鋳型となつている感を呈するほどであつた. 3) 物質の生物学的輸送能力を表現する pinocytosisは, 小器官の発達している部の細胞膜に, 小器官の発達の度合と平行して認められた. したがつて, 正常妊娠胎盤の毛細血管内皮細胞膜にはpinocytotic vesicleが多量に存在していた. 妊娠中毒症胎盤の毛細血管内皮細胞では, microfilamentが増生し, 小器官が消失している部があり, その部の細胞膜にはpinocytotic vesicleはほとんどみられず, 増生部が拡大するにしたがつて絨毛全体の物質輸送能力が多大の影響を受けている可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-10-01
著者
関連論文
- 231. 子宮癌に対する, 術前投与cyclophosphamide誘導体とフッ化ピリミジン化合物の効果の差についての形態学的判定
- 344 婦人科各種悪性腫瘍に対する, 術前投与フッ化ピリミジン化合物の形態学的効果判定
- 322 妊娠中毒症胎盤毛細血管の運動性に関する超微形態学的研究
- 397.子宮内発育遅延における周産期甲状腺ホルモンの動態 : 第80群 胎児・新生児 VII(392〜397)
- 5. 妊娠中毒症胎盤内皮細胞の超微形態学的研究 : 第1群 妊娠・分娩・産褥 I
- 未固定組織凍結法による妊娠中毒症胎盤絨毛の毛細血管内皮細胞の超微形態学的研究
- 94 妊娠中毒症胎盤の超微形態学的研究 : 特に二重固定法と凍結固定法による差について