妊娠20週以前におけるNuchal Translucency, 大腿骨および上腕骨長計測による胎児予後判定に関する検討
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概要
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Nuchal Translucency (NT)を有する児にはNTが自然消失する例が存在するが, その消失例の予後に関しての報告は少ない. また, 妊娠初・中期の大腿骨長(FL), 上腕骨長(HL)の短縮と染色体異常および致死性四肢短縮症以外の先天奇形との関連については報告がない. そこで妊娠20週以前に観察されたNTおよびFL, HLの短縮(SFHL)例の予後をprospectiveに比較・分析し, 染色体異常および先天奇形のスクリーニング検査として有用であるかどうかなどにつき検討した. 1995年4月より1996年12月までの期間に山梨医科大学附属病院で分娩した日本人妊婦1,011名中, 妊娠20週以前の超音波断層検査にてNTあるいはSFHLを認めた各々18例, 11例を対象とした(うち5例はNTとSFHLの重複). NTによる染色体異常スクリーニングのpositive predictive valueは21.4%, 先天奇形スクリーニングのpositive predictive valueは38.9%, sensitivityは10.4%, false positive rate は1.2%, negative predictive valueは94.0%であった. NTの妊娠経過中における自然消失の有無, 初回診断時からのNT増大の有無, 母体年齢および初回診断時のNT値の違いはNTを有する児の染色体異常および先天奇形の合併率に関して有意差を認めなかった. SFHLによる染色体異常スクリーニングのpositive predictive valueは36.4%, 先天奇形スクリーニングのpositive predictive valueは90.9%, sensitivityは14.9%, false positive rateは0.1%, negative predictive valueは94.3%であった. 以上の知見より, NTは染色体異常および先天奇形のスクリーニング検査として有用性が認められる. NTは自然消失の有無にかかわらず存在自体が児の異常合併率を上昇させる要因になる. SFHLは, 染色体異常のスクリーニング検査として有用であり, 先天奇形のスクリーニング検査として, より優れているといえる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1997-09-01
著者
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