不妊症患者に対する血清クラミジア抗体検査の意義

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血清クラミジア抗体検査と腹腔鏡検査が行われた不妊症患者170例を対象とし, クラミジア抗体価と付属器異常との関連および付属器癒着スコアと妊娠成立との関連を検討した. クラミジア抗体陽性患者は68例(40%)存在した. 通色素検査で判定された卵管通過障害は抗体陽性患者の46%に認められ, 抗体陰性患者の20%に比して有意に高率であった(p<0.01). 付属器癒着は抗体陽性患者の63%に存在し, 陰性患者の45%に比して高率であった(p<0.05). 米国不妊学会分類による付属器癒着スコアは, 抗体陽性患者で平均16.7と陰性患者の8.2に比して有意に高く(p<0.01), クラミジア抗体価と付属器癒着スコアとの間には正の相関が認められた(IgG: r=0.66, p<0.01, IgA: r=0.64, p<0.01). 腹腔鏡検査時に癒着剥離術が行われ, その後の観察期間内に妊娠が成立した症例の付属器癒着スコアは平均5.7であり, 妊娠に至らなかった症例の21.9に比して有意に低かった(p<0.01). 観察期間内に妊娠に至らなかった付属器癒着スコア20以上の14症例に対して, 体外受精・胚移植を施行した結果, 7例に妊娠が成立した. クラミジア治療と抗体価の推移について検討したが, ドキシサイクリン200mgを2週間投与した6力月後のIgG, IgA抗体価に変化は認められなかった. 以上の成績より, 不妊症患者に対する血清クラミジア抗体検査は付属器病変のスクリーニングとして極めて有用であるが, 薬物治療の効果判定に有用でないことが示された. クラミジア抗体陽性患者には積極的に腹腔鏡診断を行い, 必要に応じて付属器癒着剥離術を施行すること, 一方, 高度な癒着病変を有する症例には体外受精・胚移植を考慮する必要が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1997-07-01

不妊症患者に対する血清クラミジア抗体検査の意義

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