キニン産生系と排卵に関する研究
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概要
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排卵とキニン産生系との関係を明らかにする目的で,(1)幼若ラット過排卵誘発過程における経時的プレガリクレインの変動,(2)アプロチニンによる幼若ラット過排卵抑制効果,(3)卵巣摘除マウスに,性ステロイドホルモンを投与した時のプレガリクレイン値,(4)マウスの性周期および卵巣摘除時のブレガリクレインの変動を調べた.その結果,次のような成績を得た.(1)幼若ラット過排卵誘発過程において,pregnantmaresemm(PMS)投与によりプレガリクレイン値は50〜60%代に低下し,humanchorionicgonadotropin投与後は80〜90%代に回復した.またPMS投与より39時間で,最低値33.8%を示した.(2)アプロチニン16.7万KIE投与群,37.8万KIE投与群で,幼若ラット過排卵は有意に抑制された.以上の成績は,排卵とキニン産生系との関連性を示唆する.(3)卵巣摘除マウスに,性ステロイドホルモンを投与した場合のプレガリクレイン値は,卵巣摘除群94.1%に対して,estradiol benzoate 0.25μg/匹×5日投与群で101.5%,o.5μg/匹×5日投与群で99.9%,progesterone25μg/匹x5日投与群で101.3%,75μg/匹×5日投与群で108.8%,250μg/匹×5日投与群で103.5%,testosteronepropionate2.5μg/匹×5日投与群で96.7%,25μg/匹×5日投与群で102.1%であり,卵巣摘除群との問に有意差を認めなかった.したがって,血漿ブレガリクレインは性ステロイドホルモンまた性腺刺激ホルモンと直接の関係はないと言える.(4)成熟雌マウスの性周期によるプレガリクレイン値は,発情前期85.5%,発情期80.3%,発情後期83.7%,休止期89.8%で,発情期は他周期より低下傾向を示した.また全体の平均は83.9%で,卵巣摘除マウスの平均94.1%に対して有意に低下していた(p<0,001).したがって排卵周期を伴う卵巣においては,ブレガリクレインの消費,キニン産生の先進があると言える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-06-01