精神, 神経疾患が妊娠, 分娩経過と新生児の予後に及ぼす影響
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概要
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精神, 神経疾患が妊娠, 分娩経過に与える影響と出生児の短期および長期予後を調べるために1981年から1990年の10年間に東邦大学医学部付属大森病院における精神, 神経疾患合併妊娠について検討し, 下記の結果を得た. 1. 精神, 神経疾患を合併し, 生産に至ったのは8,191分娩中40分娩(35妊婦)で全分娩の0.49%であり, 合併率は従来の報告より低かった. 疾患の内訳はてんかん12例(16分娩), 分裂病17例(18分娩), うつ病2例, 神経症3例, 心因反応1例であった. 2. 妊娠合併症では鉄欠乏性貧血がてんかん16例中8例(50%)と高率に合併した以外に, 疾患の種類に特異的と考えられる合併症は認められなかった. 3. 産科手術(帝王切開術と吸引分娩)が行われた例が40例中15例(37.5%)と多かった. 適応は分裂病6例ではすべて精神, 神経症状の悪化であるのに対し, てんかんの7例すべては産科的適応であった. 4. 妊娠, 分娩により精神症状が悪化, 再発する例が分裂病に多く, 妊娠中は33.3%, 産褥期は50%であった. 5. 早期産(15%), 低出生体重児(25%)が多く, 奇形, 染色体異常が精神分裂病の2例に, 抗けいれん剤によるwithdrawal syndromeがてんかんの4例(25%)にみられた. 6. 児の長期予後では, 5歳までにてんかんの母親から出生した10例中3例に熱性けいれんがあり, 従来の3倍近くの発症率であった. 精神, 神経疾患を合併した妊娠, 分娩の管理にあたっては向精神薬の服用を含めた精神科的管理が重要であり, 産科的予後, 新生児の予後に大きな影響を与える. 出生児については早期新生児期の合併症を注意深く観察することと, 長期に精神運動発達を追跡していく必要がある.
- 1996-11-01