子宮頚部腺癌・扁平上皮癌混合型におけるサイトケラチンとビメンチンの免疫組織化学的検討
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概要
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岡山大学医学部産科婦人科学教室と水島協同病院で1975年から1994年までに診断及び治療を行った子宮頚部腺癌・扁平上皮癌混合型23症例について5種類の抗体 (35βH11, 34βE12, DE-K10, LL002, Vim 3B4) を用いて, サイトケラチンとビメンチンの免疫組織化学的染色を行い以下の成績を得た。コントロールとして用いた57例の子宮頚部, 体部の諸種の組織において高分子サイトケラチンは, いずれも扁平上皮系の組織に対して陽性を示し, 腺上皮系組織に対してはすべて陰性と扁平上皮系組織に特異的な発現を示した。また, ビメチンは子宮体部の腺上皮系組織に対して特異的な発現を示した。対象とした子宮頚部の腺癌・扁平上皮癌混合型組織では高分子サイトケラチンの発現は腺癌・扁平上皮癌共存型においては全4例の扁平上皮癌部分に認められたが, 腺癌部分では認められなかった。腺棘細胞癌においては高分子サイトケラチンの発現が全4例の扁平上皮化生部分に認められたが, 腺癌部分では1例に一部発現を認めたものの残り3例には発現が認められなかった。一方, 腺扁平上皮癌12例における高分子サイトケラチンの発現は, コントロール群の腺上皮系組織と異なり腺癌部分でも4例に陽性であった。また, 腺癌部分陰性の8例においては, 扁平上皮癌部分でも6例が陰性と高分子サイトケラチンの発現が少なく, コントロールとした子宮頚部の扁平上皮系組織とは大きく異なっていた。また, 子宮頚部の腺癌・扁平上皮癌混合型にはビメンチン陽性例は認められなかった。今回の症例の検討により, 腺癌・扁平上皮癌混合型組織におけるサイトケラチンやビメンチンの染色性の差は主に由来細胞の差によるものと考えた。すなわち, ビメンチン陽性の腺癌・扁平上皮癌混合型は子宮体部由来の可能性が示唆され, 腺癌部分に高分子サイトケラチン陽性の症例は予備細胞由来, 腺癌部分に高分子サイトケラチンが陰性の症例は腺上皮由来の細胞骨格をもつ可能性が示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1996-10-01