行動期に基づいたIUGR胎児中大脳動脈血流計測の意義 : 胎児仮死発生の予測の可能性の検討
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概要
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本研究は, reactive NSTを示す妊娠33週から40週の正常発育胎児60例とIUGR胎児20例を研究対象とし, 胎動心拍数図の記録と同時に超音波パルスドプラ法により胎児中大脳動脈(MCA)血流速度波形を連続的に記録し, 安静期と活動期のresistance index (RI)を求めた. 次に, 血流計測後2週以内に胎児仮死に陥ったIUGR胎児を対象として, 行動期別MCARIと胎児仮死との関連性について検索した. そして, 行動期に基づいたMCARI測定が胎児仮死の発生を予測できるか否かについて検討し, 以下の成績を得た. 1. 正常発育胎児のMCARIは, いずれの妊娠週数においても安静期に比して活動期で有意(p<0.05)に低値をとった. 2. IUGR胎児20例のうち, 9例(45.0%)がその後胎児仮死に陥った. 胎児仮死に至らなかった11例(非胎児仮死例)のうち, 行動期別MCARIが当科で定めたMCARI標準曲線のM-2.0SD未満の異常低値をとった症例は, 安静期では2例(18.2%), 活動期では7例(63.6%)存在した. 一方, 胎児仮死9例のうちMCARIが異常低値をとった症例は, 安静期と活動期でそれぞれ7例(77.8%)と8例(88.9%)存在し, 多くの症例が活動期のみならず安静期においてもRI異常低値を示した. 非胎児仮死症例の多くは, 正常発育胎児と同様に行動期によるRI差を認めたが, 胎児仮死例では, 1例を除いてその差を認めなかった. したがって, 胎児仮死発生の予測には安静期RIが有用であると判断された. 3. IUGR胎児において, 安静期RIがM-2.0SD未満を示す際の胎児仮死発生予測鋭敏度は77.8%, 特異度は81.8%であった. 以上の成績より, 正常発育胎児では行動期によりMCARIに差があることが, 一方, IUGR胎児においてその差がなくなり安静期RIが異常低値を示す症例の多くは, その後に胎児仮死に陥ることが明らかとなった. したがって, 行動期に基づいたMCARIの測定は, IUGR胎児の仮死発生予測につながる可能性が示された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1996-03-01
著者
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