妊娠・分娩時における羊水中Interleukin-6およびsoluble Interleukin-6 Receptorの動態に関する検討
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概要
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サイトカインと妊娠, 分娩との関連性を解明する目的で, Interleukin-6(IL-6)およびsoluble Interleukin-6 Receptor(sIL-6R)の妊娠, 分娩時における羊水中の変動を測定した. さらに培養羊膜細胞を用いてIL-6の膜透過性に及ぼす影響についても検討し, 以下の成績を得た. 1. 羊水中IL-6濃度は早産経腟分娩例(早産例)では正期産経腟分娩例(正期産例)に比較し有意な低値(p<0.01)を示した. 2. 羊水中IL-6濃度は, 正期産分娩中子宮収縮を伴う経腟分娩例および帝王切開例ではいずれも子宮収縮を伴わない例に比較し有意な高値(p<0.05)を示した. 3. 羊水中sIL-6R濃度は早産例では正期産例に比較し有意な高値(p<0.01)を示した. 4. 羊水中sIL-6R濃度は, 正期産分娩中子宮収縮を伴う経腟分娩例および帝王切開例と子宮収縮を伴わない例との間に有意差は認められなかった. 5. 正期産経腟分娩中前期破水例の羊水中IL-6濃度は, 前期破水を伴わない例に比較し有意な高値(p<0.01)を示した. また羊水中sIL-6R濃度も前期破水例では前期破水を伴わない例に比較して有意な高値(p<0.05)を示した. 6. 培養羊膜細胞にIL-6を10〜100ng/ml添加し, 24時間後にfluorescein isothiocyanate (FITC) labelled-albuminで透過性を測定した結果, 濃度依存的に透過率の上昇(r=0.912, p<0.001)が認められた. 7. 培養羊膜細胞に10ng/mlおよび100ng/mlのIL-6を添加し経時的にFITC labelled-albuminで透過性を測定したところ, 時間経過に対し各々に相関性が認められた[10ng/ml : r=0.779, p<0.01, 100ng/ml : r=0.804, p<0.001]. 以上の成績から子宮収縮時および破水時に羊水中IL-6濃度が上昇し, また羊水中sIL-6R濃度は破水時に上昇することが確認された. さらにIL-6は培養羊膜細胞の物質透過性の充進を惹起している成績から, IL-6が子宮収縮時の羊膜細胞層における物質透過性の亢進に関与する可能性と卵膜の破綻に至る過程で重要な役割を演じている可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-11-01
著者
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