妊娠子宮における動脈系微細構築について
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概要
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胎児生活の死命を制する子宮胎盤循環系の一端を形態学的に明らかにする目的で妊娠,非妊娠ヒト子宮のmicroangiogram, plastoid castを作製し,更に組織学的検索を加味して,その詳細について検討した.1) 子宮における妊卵着床,絨毛間腔の形成にとつてきわめて重要な意義をもつa.spiralisは,厚さ5〜10mmの横断割面でみると子宮腔に向つて全周に約60本存在し,非妊子宮では,内子宮口から子宮卵管角の高さまでの前後壁,左右側壁には1.2mmの間隔で比較的密に分布しているが,子宮底部内膜においてはその分布が少なく,妊卵着床の成立や着床した卵の予後にとつて子宮底部では不利な条件を形成している.2) 非妊子宮におけるa.arcuataの環状構造,uterine spiral arterial systemの著明なcoilingは1つの臓器特異性であつて,妊娠時における子宮の横径ならびに縦径方向への増大とその際の血液循環動態に対する準備構築ともいえる.3) 妊娠に伴つてa.arcuata, a.radialis, a.spiralisは著しく拡張,延長し,特にa.radialisの延長,a.spiralisの拡張は顕著であり,またuterine spiral arterial systemにおいては,a.radialisとa.spiralisの変化が子宮循環血流量,血流圧に影響を与えるものと考えられる.4) 絨毛間腔へのa.spiralisの開口数は妊娠第4ヵ月で32本,第7ヵ月で23本が観察され,妊娠の進行につれて減少する.これはtrophoblastの脱落膜への侵蝕と密接な関係がある.5) Microangiogram, plastoid castならびに病理組織学的に観察した絨毛間腔へのa.spiralisの開口状況には2型がある.6) 胎盤小葉とa.spiralisの開口数との関係はone cotyledon one openingとはかぎらず,ときには小葉間の血管吻合がみられ,また開口部位も小葉の中心と辺縁部に開口する2型がある.7) 絨毛間腔へのa.spiralisの開口数は妊娠初期7〜8週頃において規制される. 以上,uterine spiral arterial systemの特異的な構築,その構築の妊娠に伴う変化,ならびに絨毛間腔形成との関係から,妊卵着床,その後の妊娠継続に子宮血管系の構築が密接に関与していることを知り得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-06-01
著者
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