子宮頸癌広汎術後における尿路感染症に関する研究 : とくに Bacterial L-form(L型菌)の検出とその意義について
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概要
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広汎性子宮全摘術後の尿路感染症における L-form の臨床的意義を検討し, 併せて動物実験の成績より次のごとき結果を得た.(1)術後における尿路感染症の合併頻度は一般尿路感染症88.4%, 腎孟腎炎30.8%で, 起炎菌として前者には Prot.mirab, 後者には E.coli が最も多かつた.また概して GM, CL, NA, FT, CEX, CEZ などに対する薬剤感受性が高かつた.(2)術前および術後の1, 541検体のうち34検体に L-form を検出し得たが, いずれも尿路感染症経過中の検体であつた.(3)検出例の尿中細菌数は10^5/ml以上が58.8%, 10^5-1O^5/mlが8.8%・.0/mlが32.4%であつた.(4)検出例のすべてが化学療法中あるいは施行後(治療中止2週間以内の検出率は81.3%)で, 既往薬剤としては PC, Cephalosporin 系の投与をうけていたものが94.1%であつた.(5)L-form検出例についてその動態をみると, ある菌種の出現後に, 同一菌種の L-form が検出され, その後再びその菌種の出現がみられた.(6) L-form 検出例の尿中浸透圧の多くは300-650mOsm/kg.H_<2O>に分布していた.(7)術後の排尿非回復期と回復期におけるL-form検出率は前者で58.8%, 後者では41.2%であつた.(8)術後において腎孟腎炎を合併した長期生存例(5年以上)44例における L-form 検出率は, その後も尿路感染症を反覆している活動群では37.5%であつたが, 非活動群では検出し得なかつた.(9)ヒト腎組織におけるL-form検索では, 子宮頚癌治療後に腎孟腎炎を併発した3例中1例に検出された.(10) L-form のラット腎髄質部注入による実験では, 注入後3時間まで L-form が検出され, 原細菌は注入後2時間以降に検出されるようになつた.病理組織学的には注入後1-2日頃に腎髄質部に白血球浸潤, 小膿瘍形成などの所見が認められた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-12-01
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