胎児肝臓に於ける16α-hydroxylation能について
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概要
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胎児胎盤系でのestriol生成機構に於いて胎児肝臓の果たす役割を追求する目的で,正常胎児2例(妊娠6ヵ月での中絶例)及び無脳児2例(妊娠35週及び43週)計4例の肝臓を用いて,^<14>C-dehydroepiandrosterone (DHEA)及び^3H-DHEA-sulfate (S)を基質として潅流し,肝組織及び潅流液中の放射性代謝物について胎児肝臓の16α-hydroxylation能に主眼を置いて検索し,次の成績を得た. 1) ^<14>C-DHEAを基質とした場合,肝組織中の放射性代謝物の35〜65%が硫酸抱合型として抽出され,胎児肝臓のsulfokinase活性の強力なことが示唆された. 2) 放射性代謝物としてかなり大量の16α-hydroxy(OH)-DHEA及びΔ_5 androstenetriol (AT)が同定されたことから,肝組織中の16α-hydroxylase活性及び17β-hydroxysteroid dehydrogenase活性の強力なことが示唆された. 3) 潅流液中の放射性代謝物としては,肝組織中では極めて少なかつた16α-OH-DHEAが最も多く,その大部分(95%)は潅流液中に見出されたことから,胎児肝臓はDHEA or/-Sを前駆物質として大量の16α-OH-DHEAを生成し,直ちに循環血中に放出することが示唆された. 4) 肝組織中の放射性代謝物としては,Δ_5ATが最も大量に検出され,16α-OH-DHEAと比較しても多く見出された.Δ_5ATは肝組織中に止る主要なDHEA or/-S代謝物であると思われる. 5) 潅流液中には大量の16α-OH-DHEAの外に比較的少量のΔ_5AT及び16α-OH-testosteroneが検出され,後二者も少量ではあるが循環血中へ放出されることが示唆された. 6) 無脳児例では,正常児例に比べて硫酸抱合型の生成及び16α-OHステロイドの生成率がやや低い傾向が認められた.胎児の胎令の相異による代謝能の相異である可能性も考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-06-01
著者
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