冷却負荷サーモグラフィー検査による更年期不定愁訴婦人の末梢皮膚交感神経機能の評価
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概要
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更年期不定愁訴婦人の病態を検討するために冷却負荷サーモグラフィー検査を施行し, その有用性とそれによる病因の解明を目的とした. 対象は愁訴群の54例(40〜60歳), 対照群の89例(18〜59歳)で他科疾患の合併者は除外した. 検査は年間を通じて24.0±0.9℃ (mean±SD)の室温下でなされた. 測定部位は四肢中最も動静脈吻合が多く, 交感神経支配のみである右第2指爪床とした. 負荷前温度安定のための検査室入室から測定開始までの安静時間は, 10分あれば充分と思われた. 冷却負荷は4℃の冷水1分とした. 対照群を18〜39歳の若年群(32例), 40〜54歳の有経群(45例), 47〜59歳(12例)の閉経群に分けて負荷後1分から10分までの回復率をみると3群間に有意差はなく, 加齢による影響, 閉経前後のestrogenの減少による直接の影響はこの検査に反映しがたいと考えられた. 負荷後5分で回復率曲線の変曲点が変り, 7分でほぼプラトーになるため, 回復率の指標として5分値を, 測定時間を負荷後7分までとした. 対照群の若年群・有経群の6例の5分回復率の変動率は5.6±4.8%(mean±SD)であり, 再現性は良好で有用な検査法と思われた. 対照群の5分回復率-2SDで愁訴群を分けると, 回復率良好群(26例), 不良群(28例)とほぼ半数ずつを占め, 負荷後1分から7分まで回復率に有意差(p<0.01)を示した. Body Mass Index, Kupperman Index, 血中Estradiol, 血中Testosterone値は両群間で有意差はなく, 愁訴内容もほぼ同様であったが負荷前温度のみ有意差(回復率良好群34.0±0.56℃, 不良群30.9±3.68℃, p<0.01)がみられた. これらは末梢交感神経の持続的緊張と冷水負荷に対する生体の順応性の遅延を示唆するものであり, 更年期不定愁訴婦人の約半数に交感神経系の機能異常が認められたことになる. 今後新しい交感神経, 副交感神経機能検査を追加することにより, より詳細な機序の解明を期待したい.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-01-01
著者
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