Ditestosteroxydimethylsilaneの雌性ラットにおける代謝と実験的マウス子宮発癌におよぼす影響
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概要
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Steroid hormoneを種々の形の誘導体にすることによつて,各組織へのとりこみ率や代謝,さらに生物学的活性を変化させることが可能である.Testosterone(T)にsilicon etherの側鎖を導入して2コのT分子を結合させたditestosteroxydimethylsilane (DTDMS)は生物学的にも,また生化学的見地からもTとはいささか異なつた態度を示す.そこでDTDMSの作製法を述べるとともに,以下の諸点について検討してみた.(1) 赤外吸収帯による比較法で,aroxysilaneに特徴のある吸収帯を認めた.(2) 水,alcohol中では徐々に水解されてTに転換するが,acetoneやbenzeneなどの有機溶媒中では安定であつた.(3) DTDMSの生物的活性はTのような強いandrogenicないしはanabolicな作用を示さず,また(4) ラットを用いた急性毒性試験ではLD_<50>> 1.0g/kgであり,亜急性毒性試験でも,体重減少をはじめ前立腺,精〓腺の肥大ないしは卵巣のpolycysticな変化がみられたほかは,肝,腎その他の器官に著しい影響が認められなかつた.(5) 雌ラット諸臓器組織へのとりこみ実験で,子宮頚部ではDTDMSはTよりもとりこみ率が高く,一方,脳下垂体や肝組織では逆の傾向を示した.(6) DTDMSの代謝は肝,副腎で著しく,卵巣においても若干のestradiol-17βへの転換が認められた.(7) マウスの実験的子宮頚癌組織へのとりこみでは,DTDMSはTよりも大きく,また正常子宮頚部組織へのとりこみに比較して高い傾向がみられた.(8) マウス子宮頚部の実験的発癌過程において,DTDMSはTよりもやや強い抑制効果を示した. Silicon steroidのような誘導体化は,Tのほかにestradiol-17βのような17-hydroxy steroidsには容易に応用できるので,steroid hormoneの生体への投与形式の一つとして,臨床的意義をもつものと考えている.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-06-01