C型肝炎の母子感染について
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概要
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HCV抗体測定法が開発されて輸血時のスクリーニング検査に導入されたことにより輸血後C型肝炎は激減したが, それ以外の感染経路については不明な点が少なくない. 今回その一つとされる母子感染の実態を明らかにする目的で, 当科ならびに関連病院を受診した4,801例の妊婦とその出産児を対象に, C型肝炎の母子感染の発生とその成立因子について検討し, 以下の結果を得た. 1) HCV抗体陽性者は4,801例中59例(1.23%), RT-semi nested PCR法によるHCV-RNA陽性者は25例(0.52%)であった. 2) HCV抗体陽性者のうち, 現在までに分娩に至った14例において, 分娩時臍帯血中HCV抗体は全例陽性であったが, HCV-RNAは全例陰性であり, 胎内感染と明らかに断定できる症例は存在しなかった. 3) 追跡中の13例の児のうち3例にHCV-RNAが検出され, 母子感染の発生率は全妊婦に対し0.06%, HCV-RNA陽性妊婦に対し23%であった. また, これら3例では, 妊娠末期の母体血清GPT値が軽度上昇を示したのに対して, 他の10例はすべて正常範囲内であった. 一方, HCV-genotype, 妊娠末期の母体血中HCV-RNAの半定量, HCV抗体価およびγ-GTP値と, 母子感染成立との間に関連性は認められなかった. 4) 児のHCV-RNAが陽性となった3例のうち, 1例は母体でのHCVとHIVとの重感染が認められたが, HIVの母子感染は認められなかった. 5) 母乳中にHCV-RNAが検出された症例が3例認められたが, これらの児からはHCV-RNAは検出されず, 母子感染における母乳の意義は不明であった. 以上より, C型肝炎の母子感染の存在が確認され, 母子感染成立の因子の一つとして妊娠末期における母体の肝炎の活動性が重要であることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-12-01
著者
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