HTLV-Iキャリア妊婦感染リンパ球におけるプロウイルスコピー数の定量化と母児感染リスクの相関について
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概要
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Human T lymphotropic virus type-I (HTLV-I)母児感染要因を明確にするためにHTLV-Iキャリア妊婦末梢血リンパ球(PBL)中のHTLV-Iプロウイルスコピー数をPCR法により定量し, 培養系によるHTLV-I感染細胞数, 抗原陽性率, 抗体価などとの相関を検討した. HTLV-Iキャリア妊婦25例のPBL 1×10^6cellよりDNAを抽出し, 0.25μgのDNAをサンプルとしHTLV-I tax領域primerを用いてPCR法を行い, オートラジオグラフィにて定量した. なお検量線作成にはTLOm-1(1copy/cell)の段階希釈を用い, サンプル中DNA量補正のためβ-globinに対する定量系PCR法を行った. またPBLをsemi-cloning培養し抗原陽性率を測定し, 定量系培養を用いて感染細胞数も検索した. 加えて抗HTLV-I抗体価をIF法にて測定した. HTLV-IプロウイルスはDNA 0.25μgあたり2.8から9,176コピー存在し, 定量系培養との比較により1感染細胞あたり約1から40コピーが存在し, コピー数の多い検体ほど感染細胞数が多い傾向を認めた. しかし1感染細胞中のコピー数と抗HTLV-I抗体価には相関は認められなかった. 母乳哺育を行ったHTLV-Iキャリア妊婦PBLを用い, 母児感染成立の有無を検討した結果, 抗原陽性率が2.0%以上で高率に母児感染が成立していた. これは今回の検索における抗原陽性率と1感染細胞中のHTLV-Iプロウイルスコピー数との相関線によると9.4コピー以上に相当していた. 今回の一連の検索により, HTLV-IキャリアのPBL感染細胞中にはmultipleにHTLV-Iプロウイルスコピーが存在することが証明され, このコピー数が母児感染生起の要因となる可能性を示唆し得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-09-01
著者
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