ラット子宮収縮に対するコカインの作用の検討
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概要
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近年コカインの妊娠可能世代での乱用が問題になっており, 米国では妊婦の8%が使用しているとの調査報告がある. コカインにほ強い血管収縮作用と神経作用があることが知られており, 妊娠との関係では早産, 常位胎盤早期剥離, Small for dateなどが報告されている. 今回我々は, ラット子宮にバルーンカテーテルを挿入し, 中毒量に達しない量のコカインの静脈内投与で子宮収縮が増加するか否かを検討した. 妊娠ラット23匹(妊娠群), 非妊娠ラット23匹(非妊娠群)を用い, 頚動静脈, および子宮腔内にカテーテルを挿入し, 翌日コカインを1.25から20mg/kgの範囲で1分間かけて静脈内に投与し, 痙攣の発生および循環不全による死亡頻度を調べ, 生存ラットについて子宮内圧, 心拍数, 血圧の測定を行った. 1. 10mg/kg投与により, 妊娠群では50%(2/4)が痙攣発生後死亡し, 非妊娠群では50%(4/8)に痙攣が発生しそのうちの半数が死亡した. 20mg/kg投与では,妊娠群は100%(2/2)が痙攣発生後死亡し, 非妊娠群は75%(3/4)に痙攣が発生し, そのうち67%(2/3)が死亡した. しかし, 2.5mg/kg以下の投与量では妊娠群, 非妊娠群ともに痙攣や死亡はなかった. 2. 2.5mg/kg投与により, 投与直後から妊娠群, 非妊娠群ともに子宮収縮の増加が認められ, 妊娠群では投与後10分のMontevideo Unit (M.V.U.)値は投与前と比較して約250%, 非妊娠群では約100%上昇した. 3. 2.5mg/kg投与により, 妊娠群のM.V.U.は投与後60分値でなお投与前より有意に上昇していたが, 非妊娠群では投与後20分で投与前値に復した. 4. 2.5mg/kg投与により, 妊娠群, 非妊娠群の心拍数は対照として生理食塩水を投与した群と比較して徐脈傾向を示し, 一方血圧ほ有意に上昇した. 以上の成績から, コカイン(2.5mg/kg投与)は, 妊娠ラット, および非妊娠ラットに対する子宮収縮作用を有し, 特に妊娠ラットに対する作用は強く, 持続する傾向があることが明らかになった. また, コカインは循環器系への作用として心拍数低下と血圧上昇のあることも示された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-05-01
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