アロマターゼ阻害剤のラットSDN-POAの性分化に及ぼす影響
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概要
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雄ラットの視索前野の性二型核 (SDN-POA) は雌に比べ数倍大きく, この性差は周生期のアンドロゲンレベルに依存して発現することが知られている。SDN-POAの性特異性を決定する臨界期において, 中枢でのエストロゲン生成の意義を研究する目的から, 本研究では, 非ステロイドアロマターゼ阻害剤であるCGS16949A (CGS) を胎生後期又は新生仔期に投与し, SDN-POA断面積を測定した。CGS は1日1回0.5mg/kgを妊娠16〜20日に連日母獣に投与 (F群), 又は生後1〜14日 (N群) に連日投与した。F群は胎生20日, N群は生後7日にCGS投与2時間で一部を屠殺し, 脳内アロマターゼ活性, 並びに血中testosterone (T), corticosterone (B) を測定した。生後30日で両群とも屠殺し, 脳を固定, パラフィン包埋後Gorski et al.の方法に従ってSDN-POA領域を含む切片を作成, 画像処理システムNEXUS 6800で断面積を測定した。胎生20日の視床下部ホモジネートを用いたCGSのin vitroアロマターゼ阻害能は, IC_<50> 1.4nMと強力な阻害を示した。ラットにCGS皮下投与後2時間での視床下部アロマターゼ活性は, F, N群ともに対照群の20〜24%, 13〜29%と強く抑制された (p<0.001) が, 血中T, Bは対照群と差を認めなかった。生後30日のSDN-POAは, 対照群雄0.31, 雌0.10mm^2と性差がみられるが (p<0.001), F群雄0.15, 雌0.12mm^2, N群雄0.16, 雌0.10mm^2であり, CGS投与雄で著明に断面積が減少し (p<0.001), F群では性差が消失した。CGSのin vivo投与は周生期血中アンドロゲンを低下させることなく脳内アロマターゼ活性を特異的に抑制したことから, SDN-POAの性差発現にエストロゲンへの転換が必須であり, 胎生後期と新生仔期のアロマターゼ活性がともに重要な役割を果たす可能性が示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-03-01
著者
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