妊娠初期自然流産に関する免疫学的ならびに細胞遺伝学的研究
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概要
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妊娠初期自然流産における母体免疫の役割を解明する目的で, 未妊婦, 正常妊婦および自然流産患者を対象として夫婦間リンパ球混合培養(Mixed Lymphocyte Culture, MLC)抑制試験を行い, 母体血清中のMLC抑制因子を測定した. また, 流産例では, 流産物の染色体分析により染色体核型正常例と異常例に区別して両者間のMLCの差異を検討した. その結果, 以下の成績を得た. 1) 未妊婦7名各々に対して正常男性4名を組合せた計28検体でのMLC抑制因子の平均値は0.86%であった. 2) 正常妊婦21名(のべ30検体)の全妊娠期間を通じたMLC抑制因子の平均値は24.1%で, 未妊婦群に比較して有意に高値であった(p<0.01). 3) 流産物36例の染色体分析の結果, 17例(47.2%)に染色体異常を認め, その内訳は常染色体トリソミー7例, 3倍体5例, Xモノソミー4例, 常染色体モノソミー1例であった. 4) 自然流産患者36例でのMLC抑制因子の平均値は-9.8%で, 正常妊婦群に比較して有意に低値であった(p<0.01). しかし, 染色体核型正常例と異常例のMLC抑制因子の平均値は各々-8.4%, -11.2%で, 両者間に有意の差は認められなかつた. 5) 流産例のうち, 流産前に胎児心拍を認めた11例のMLC抑制因子の平均値は-19.6%で, これは一度も胎児心拍を認めなかつた25例の平均値, -5.4%と比較して有意差はなかつた. 以上の結果から, 妊娠により母体血清中にはMLC抑制因子が出現するが, 流産例ではその活性が低値であることが判明した. しかし, 流産物の染色体異常の有無や胎児心拍の有無によるMLC抑制因子の差異が認められなかつたことから, MLC抑制因子の低下は流産の第一義的原因というよりも, むしろ自然流産という現象に帰結した母体免疫状態を反映したものと判断された.
- 1992-11-01
著者
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