分泌期における超音波内膜像と組織像の関係
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概要
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自然排卵周期を有する不妊患者33例に対し, 分泌期中期を中心に超音波子宮内膜像と子宮内膜組織像とを比較検討した. 超音波子宮内膜像は, 内膜基底層部分から内腔に向けて広がる高輝度部分hyperechoic endometrial area (HEA)が子宮内膜に対し占める割合(HEA ratio)を測定した. 組織学的日付診は腺上皮細胞のN/C比, 分泌上皮細胞, 核下空胞腺, 核上空胞腺, 腺分泌, 腺腔比, 腺/間質比, 間質比, 間質細胞密度, 間質細胞mitosis, 血管周囲細胞浸潤, 脱落膜様変化/間質比の12個のパラメータを用いて数量化した. なお, 排卵の確認は月経周期10日目前後より連日の経膣超音波断層法を施行し, 主席卵胞消失日を排卵日(L0)とした. 子宮内膜組織はL5〜L10に経膣超音波断層法にて子宮内膜を正中部矢状断面で観察後, 子宮底部に近い正中部の前面及び後面から一掻き掻爬にて採取した. その結果, 子宮内膜描出ができなかつた2例を除く31例のうち, 定型的超音波子宮内膜像を示した20例においてHEA ratio 80%が組織学的日付診のL6, 90%がL9に相当し, 超音波子宮内膜像による日付診となる可能性が示唆された. 一方, HEA ratio測定不能な非定型的超音波子宮内膜像を呈した11例を, (1)高輝度型(分泌期前半よりHEA ratioほぼ100%の高輝度内膜像を呈する) 5例, (2)斑型(高輝度部分と低輝度部分が混在する子宮内膜像を呈する) 5例, (3)低輝度型(分泌期中期においても高輝度部分を伴わない内膜像を呈する) 1例の三つに分類し組織像と比較した. 高輝度型は腺のdating遅延と間質において細胞密度の増加, 一部にdatingの部分亢進が認められる. 斑型は症例により同一組織内で腺間質の部分的datingの解離が, 低輝度型は腺の低形成及び分泌障害の状態が認められ, 組織学的にも日付診が困難な内膜所見を呈した. 以上より, 経膣超音波による子宮内膜像は内膜全体の組織学的正常, 異常状態を把握しうることを示した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-05-01
著者
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