CAP療法後の電解質の変動について

概要

論文の詳細を見る
近年の卵巣癌に対する化学療法には, Cisplatinを主体とした多剤併用療法が多く用いられているが, 当科では, 卵巣癌術後にCAP (Cyclophosphamide, Adriamycin, Cisplatin) による制癌治療を施行している。過去5年間 (1984年〜1988年) に, 卵巣癌32例, 子宮内膜癌9例, 子宮頚部腺癌3例に対して合計158コースの治療を行った。このような強力な化学療法では, 厳重な副作用の監視が必要であるが, 今回は, 癌化学療法に伴う嘔吐の影響について検討した。本療法では, Cisplatinの腎毒性を軽減するために1日約5,000 mlの輸液が行われる一方, 激しい嘔吐による体液の喪失がみられ, 電解質のバランスが崩れがちである。我々は, 嘔吐量と血清電解質濃度の関連について検討し, 以下の結果を得た。(1) 当科で施行したCAP療法158コースのうち重篤な電解質異常を来したのは1例であった。その症例は, 低Na血症によりけいれん発作及び, 意識消失を来した。(2) 血清電解質濃度異常には, 嘔吐が深く関与していることが示唆された。よって, CAP療法では, 制吐剤を使用し, 嘔吐量の軽減に努めることが必要である。(3) 抗癌剤による電解質の異常は他の副作用に比較して頻度は比較的少ないが, 放置すれば非常に重篤となるため, 治療中は, 血清電解質濃度を頻回に測定し, 異常があれば速やかに対処することが必要である。また, SIADHとの鑑別のためにも尿中Na濃度の測定が望ましい。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1991-12-01

CAP療法後の電解質の変動について

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク