妊娠ラットにおける食塩と過酸化脂質
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概要
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自然発症高血圧ラット(SHR)の妊娠母体に1.0%, 1.5%, 2.0%の食塩水および水道水を自由に摂取させ妊娠中毒症に似た状態を作成することにより, その時の過酸化脂質の動態を中心に追求し, 以下のごとき結果を得た. 1)1.0%食塩水投与群では水道水投与の対照群と比べてほとんど変化はなかった. 2.0%の食塩水では母体の水分摂取量が極端に増加し, 母ラットが死亡することもみられた. しかし1.5%食塩水投与群では飲水量は増加するものの, 体重増加量および母ラット1匹あたりの胎仔数も対照群と有意差はなかった. 胎仔1匹あたりの平均体重は対照群の4.0gに対し, 1.5%食塩水投与群では3.5gと有意差がみられた. 2)妊娠母体の血圧は対照群では妊娠17日目頃より低下傾向がみられたが, 1.5%食塩水投与群では分娩時まで高い値が続いたのが特徴的である. 3)妊娠時母体の血清トリグリセライド値は非妊時に比べ約4倍もの高値を示すが, 1.5%食塩水投与群では対照群よりさらに有意に高値を示した. 4)1.5%食塩水投与群では母体血清および肝組織中の過酸化脂質濃度が対照群に比べて有意に高い値を示した. 母体の肝組織中のSOD活性とVitamin E値は妊娠に伴って増加し, 反対にcatalase活性は低下した. glutathione peroxidase活性はあまり変化がみられなかった. また対照群との比較では1.5%食塩水投与群のglutathione peroxidase活性が対照群に比べて有意に低下したが, その他のantioxidant物質に著明な変化はなかった. 5)胎仔の血清過酸化脂質濃度は母体に比べて有意に低値をとり, 対照群と1.5%食塩水投与群との比較では有意差はなかった. 以上の実験より妊娠SHRに食塩水を負荷すると妊娠中毒症時に似た状態となった. 妊娠中毒症時に母体の血中の過酸化脂質が上昇するのは, 主として肝組織中の過酸化脂質濃度の上昇を反映していることが判明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-03-01
著者
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