男性側抗精子抗体の体外受精に与える影響
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概要
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男性側に抗精子抗体が存在する場合の, 抗精子抗体の体外受精への影響, および抗精子抗体保有症例に対する射精直後の精子洗浄の有効性について検討した. 1) 体外受精を施行した101組の不妊夫婦の男性について, 血清中の抗精子抗体を精子不動化試験 (sperm immobilization test, SIT), 精子凝集試験 (sperm agglutination test, SAT) にて, 精漿中の抗体を direct immunobead test (D-IBT) にて検討した. その結果, SIT 陽性者は8例(7.9%), SAT 陽性者は10例(9.9%), D-IBT 陽性者は8例(7.9%), いずれかの検査が陽性であった者は合計で14例(13.9%)であった. 2) 抗精子抗体検査陽性14例の中で, 6例に受精率の低下 (成熟卵子の受精率が50%未満) が認められた (受精率低値群). 一方, 8例の受精率は正常であった (受精率正常群). 3) 受精率低値群の各抗精子抗体検査陽性率はSIT: 50%(3/6), SAT: 83.3%(5/6), D-IBT: 100%(6/6) で, 一方受精率正常群では, それぞれ62.5% (5/8), 62.5% (5/8), 25% (2/8) であり, 患者血清を用いた SIT, SAT よりも, D-IBT に受精成績との関連性が認められた. 4) 受精率低値群は D-IBT にていずれも IgG と IgA の結合が認められた. 一方受精率正常群はいずれも IgA の結合は認められなかった. 5) 精子洗浄法により IgG の結合率が36.7%, IgA の結合率が6.6%の減少を認めたが, 受精率の改善は認められなかった. 6) 受精成立13例の胚移植の結果, 6例に妊娠が成立した. 以上より, D-IBT にて IgA と IgG 抗体の結合がある場合, または IgA の結合がある場合に受精阻害が顕著であると考えられた. 受精卵の分割や着床に関しては, 自己抗体の影響は少ないと考えられた.
- 1990-12-01
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