更年期不定愁訴症候群に関する研究 : 卵巣機能, 加齢ならびに心理面からの検討
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概要
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更年期不定愁訴の諸症状と, 卵巣機能, 加齢, 精神的性格的素因の諸因子との関係について検討した。子宮癌検診を受診した1,270例, 子宮全摘に際して両側卵巣摘出例165例, 一側又は両側卵巣保存例82例を対象とし, Kupperman閉経期指数 (K指数), Cornell Medical Index (CMI), 矢田部Guilford性格検査 (YG性格テスト) を施行し, 以下の結果を得た。1) 加齢との関係: K指数は30歳代後半まで増加し, 以後ほぼ一定値を示した。症状別に検討すると, ゆううつ, 興奮性など5症状は加齢による影響はみられず, 知覚鈍麻, 動悸など7症状は加齢に伴い漸増し, 顔面熱感, 発汗, しびれ感, 肩こり腰痛, 頭痛の5症状は更年期にピークを形成した。2) 両側卵巣全摘との関係: 子宮摘出時, 卵巣を保存した対照群に比較し, 両側卵巣全摘例では, 顔面熱感, 発汗, しびれ感, 知覚鈍麻, 肩こり腰痛, 蟻走感の6症状が有意に多発した。3) CMI-深町の神経症判別との関係: 神経症的傾向とK指数の間には, 有意の相関が認められた。症状別にみると動悸, 息切れ, 興奮性, めまい等との関係が明らかであった。4) YG性格テストとの関係: K指数は安定積極型D類で最も低く, C, Aと順に増加し不安定不適応型B・E類で最高値を示した。症状別では興奮性, 動悸, 息切れ, ゆううつのほか知覚障害症状との間に強い関連が認められた。以上より卵巣機能と関連の深い症状として顔面熱感, 発汗, しびれ感, 肩こり腰痛の4症状が, また精神的要素に多く依存する症状として, 息切れ, 典奮性, 動悸の3症状が抽出された。5) 顔面熱感, 発汗と血中LH, FSHとの関係: 全症例では明らかな相関は認められなかったが, 閉経前後に分けて検討すると, 閉経後において, 顔面熱感は発症群の方のLHが有意に低値を示した。
- 1989-02-01