エストロゲンの血管細胞への直接作用としての抗動脈硬化作用
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概要
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エストロゲンの抗動脈硬化作用はいくつかの作用により成り立つが, この中の血管細胞への直接作用に関し検討した. エストロゲンとしてestrone sulfate(E_1-S)を使用し, 培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における接着分子のintercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1), vascular adhesion molecule-1 (VCAM-1)と増殖因子のplatelet-delived growth factor (PDGF), interleukin-1(IL-1), interleukin-1(IL-6)の産生に及ぼすエストロゲンの影響を調べた. 接着分子の実験は, HUVECにE_1-Sを添加, 培養した後, IL-1β(20U/ml)にてICAM-1, VCAM-1を誘導し, 両者をcellular enzyme-linked immunosorbent assay (Cell-ELISA)で測定した. また, 末梢血より採取した単球を螢光染色し, エストロゲン添加, 非添加の両条件下で接着している単球数を螢光顕微鏡で比較した. 増殖因子の実験では, HUVECにE_1-Sを各種濃度で添加, 培養した後, mRNAを抽出し, RT-PCR, Southem blottingにて各種増殖因子のmRNA発現を検討した. RT-PCRにて, estrogen receptor (ER) mRN, estrone sulfatase (STS) mRNAの発現をHUVECに認めたことから, 血管内皮細胞は, エストロゲンの標的細胞である可能性が考えられた. 接着分子では, ICAM-1は10^<-10>M E_1-S濃度で8時間培養した場合92%, 10^<-8>M E_1-S濃度で12時間培養した場合は78.3%と, 非添加群と比較して有意に抑制された. VCAM-1も10^<-10>M E_1-S濃度で1時間培養した場合93.4%, 10^<-8>M E_1-S濃度で12時間培養した場合には64.9%と, 非添加群と比較して有意に抑制され, 共に濃度依存的かつ培養時間依存的に発現が抑制された. HUVECに接着した単球の数は, 10^<-10>MのE_1-Sを添加, 培養した場合, 非添加群の82.8%にまで抑制されたにすぎないが, 10^<-8>Mを添加, 培養した場合, 65.9%にまで抑制された. 増殖因子では, 10^<-10>MのE_1-Sを添加, 培養した場合, IL-1, IL-6, PDGF-A鎖のmRNAの発現は, エストロゲンを添加していない対照のそれぞれ53%, 76%, 57%にまで抑制され, 10^<-8>MのE_1-Sを添加, 培養した場合には, それぞれ24%, 24%, 35%にまで抑制された. これらの結果より, エストロゲンは, 血管内皮細胞において, 接着分子ICAM-1, VCAM-1と増殖因子IL-1, IL-6, PDGFの発現を抑制することで, 血管細胞に対し, 直接, 抗動脈硬化作用を発揮することが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1999-03-01
著者
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