乳癌術後選択的エストロゲン受容体調節薬内服婦人の子宮体癌検診(婦人科がんスクリーニングの有用性と問題点)
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概要
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選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)であるタモキシフェン(TAM)使用患者のスクリーニングを行った.方法は内診,子宮膣部細胞診,子宮内膜細胞診,経膣超音波検査を施行し,検診間隔は6ヵ月とした.また,必要に応じて子宮内膜生検または子宮鏡を施行している.今回の136名のスクリーニングにおいて以下のことを明らかにできた.1.経膣超音波検査所見である子宮内膜の肥厚は,ポリープ状に発育する例と子宮内膜下に子宮腺筋症様に発育する例がある.また,このような変化は閉経後婦人を中心に起こる.2.閉経後TAM内服婦人で子宮内膜肥厚を認めた場合,通常の子宮内股生検では十分な検体を得ることが難しく正確な診断が困難であり,子宮鏡下に検索するべきである.3.子宮内膜ポリープの免疫組織学的検討では,子宮内膜腺ではestrogen receptor(ER)α,ERβ,progesterone receptor(PR)A,PR B共に強く染色されており,子宮内膜の増殖期に一致した.Ki-67指数では,その亢進がみられた.以上の結果より,ERαが増殖亢進の鍵となるリセプターと考えられた.4.K-rasの変異の検索では11例中7例に変異を認め,GAT変異4例,GCT変異2例であり, enrich PCR-ELMAでは1例変異を決定できなかったが,これは,それぞれの検査の感度によるものと推測された.この結果は,これまでの報告と比して高頻度であり,また通常の子宮内膜癌で報告されている変異はGTT変異が多く,TAMに関連した子宮内膜ポリープのK-ras変異は通常の子宮内の発痛過程で起こる変異と異なる可能性が示唆された.TAMに関連した子宮内膜癌の背景病変を検索すると,TAM内服中に発見された子宮内膜癌は,通常の子宮内膜癌と変化がなく,TAM内服終了後発見された子宮内膜癌は,背景病変に拡張した腺管や,ポリープ状病変を随伴していた.以上より,子宮内膜ポリープはその後の子宮内膜癌発生と少なからず関係があることが推測された.日本においては多くの地域で子宮頸癌検診受診者のうち,最近6ヵ月以内に不正出血を訴えたことのある者で,1.年齢50歳以上の者,2.閉経後の者,3.未妊婦であって月経不規則の者,4.その他医師が必要と認めた場合が子宮体癌検診の対象となっている.TAMに関連した子宮体痛が通常の子宮体癌の性状と変化がないのなら,TAM内服婦人にしても不正出血があった時に,検診を受けるように推奨にすればよいという考えもある.しかし,TAM内服婦人の子宮内膜癌のスクリーニングについては,そのリスクを限定してスクリーニングを行うには,十分な情報が集積されておらず,今回の検討でTAM使用患者には特徴的な子宮内膜変化が起こることも判明した.この点からも,TAM服用患者はすべて投与開始直後より無症状でも少なくとも1年に1回婦人科検診の対象とすべきであると考えている.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2003-08-01
著者
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