司会のまとめ : 女子のトレーニング : 日本体力医学会創立30周年記念シンポジウム
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概要
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元来,トレーニングは各人の現段階の体力に基づいて,トレーニング負荷量が決定されるので,女子のトレーニングにおいても,その原理は男子と変わるものではない。しかし女子は,思春期以降女性ホルモンの分泌に伴い,1ヵ月の周期で性機能や体力に波状動揺のあることが矢口られており,また長期的に見れば妊娠,出産という女性特有の現象がある。したがって,女子のトレーニングは女性としての特性との関連において,体力の性周期,妊娠や出産などに伴う変動,トレーニングの性機能に及ぼす影響,トレーニング効果の表われ方やトレーナビリティーの男性との相連などを科学的に分析,女子のトレーニングの留意点を明らかにする必要がある。本シンポジウムは,特にこの点にしぼって,研究発表及び討論がなされた。4氏の研究発表の内容を総括して,女子のトレーニングについて,次の諸点が明らかにされた。1.成人女子の身体運動に伴う生体反応は,一性周期についてみれば卵胞期にくらべて黄体期,月経期には反応の大きく表われる機能もあり,運動の影響は性周期の時期によって異なるが,しかしこの生体反応はいずれも生理的範囲である。また長期的に見れば,運動による多少の悪影響は運動中止によって正常に戻る。妊娠,分娩等についても,スポーツ婦人は一般婦人と変わらず,運動が女性機能に悪影響を与えるとは云えない。むしろ運動によって体力を高めることが,reproductionの能力を高めると考えられる。2.妊娠中は体重増加に伴い,運動能力は著しく低下する。この低下は出産後1年から1年6ヵ月頃迄に体重の減少に伴って回復するが,回復しない中に次の妊娠を迎えることもあり,意図的な体力回復が考えられなければならない。また中高年の女性では,やや早く歩くという程度の運動負荷でも呼吸循環機能にトレーニング効果が表われる位に体力の低下している者もある。したがって,トレーニングを奨励した方がよいのではないか。3.女子の体力のトレーナビリティーとしては,背筋力110-130kg,握力37-40kg,V^^・o_2max 50-60ml/kg/min.,最大酸素負債5.5-6.5位と考えられる。4.女子の一生を通してトレーニングを考える時,思春期に女子の方が男子より早く各種機能の急増期が表われるが,この頃,初潮が来期し,月経中の体育の見学や運動嫌いがふえて運動量が減る一方,性ホルモンの影響で体脂肪が急増し,体力は十分伸びない中に停滞してしまう。したがって,思春期の女子に十分トレーニングを行わせ,体力を高めておくことが必要ではないかと論じられた。いずれにしても,女子が運動やトレーニングを行っても女性としての機能に悪影響は少なく,トレーニングを行う方がよいのではないかという論議の方が優勢であった。
- 1979-06-01
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