国民教育制度成立期の学校体育政策
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概要
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従来の体育史研究において, 森文政期から改正小学校令に至る学校体育政策は, 連続的な発展の時期として理解されている. 本研究は, そのような歴史像の若干の修正を意図し, この時期の学校体育政策の諸局面の不整合性を, 国民教育制度成立期の中心課題である国民意識の形成との関連で解明しようとした. 1) 森の体育構想の主な内容は, 軍事訓練による身体鍛練であり, それは, 国民の思想形成の一環として重要な位置を占めていた. 森の体育・徳育推進策は, 政府, 陸軍, 教育界, 民衆の内部で, 矛盾をはらみつつ展開した. 2) 森文政後期には, 国民の思想形成との関連で実業教育が強調され, また改正小学校令においては, 尋常小学校の体操は随意科となった. 森文政に対する批判を内在した教育勅語の発布を契機に, 森文政期に展開した体育推進策は, 教育政策の内部で位置と力点に変化をこうむり, その比重を低下させていったのである.
- 1972-12-25