教科の心理1
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概要
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411.阪本の研究は,昨年の総会に発表されたものにひきつづいて,教科書や児童読み物のむずかしさを,語彙比重(Vocabulary Weight)によって評定しようとするものである。阪本の作成した標準語彙表により,もっともやさしい単語5,000をA,次にやさしい7,500をB,標準語彙ではもっともむずかしい10,O00語をCとし,固有名詞をD,表外語をEであらわすと,V.W.=B%+2C%+3E%が読み物のむずかしさをあらわす指標になるという。この報告に対して,標準語彙表作成の意義と,V.W.のインデックスとしての有用性は十分みとめられるにしても,ウエイトのかけ方がこれでよいのか,という疑問がきかれた。つまり,Aはまったくむずかしさがなく,Cに属する語彙はBの2倍むずかしいのか,ということである。この点,児童の読書という点からみて心理学的に妥当なウエイトをきめる問題が解決されねばならない。また、読み物のむずかしさをあらわす他の指標と併用することによって,一層的確なむずかしさの診断と,それにもとづく処置が可能になると考えられた。412.神沢らの分数の認識過程についての研究は,一昨年の総会以来すでに5つ目の発表であるが,今回のものは,2つの変数がy=αχ(ただしαは整数もしくは分数)の関係にある場合,χがいろいろに変化したときyの値をたずねた資料にもとづいている。とくに,2つの変数間の大小関係が正しく把握されているかどうかが論じられた。この発表に対しては質疑は出なかった。分数の理解は算数のうちでもっとも指導のむずかしい点だと考えられ一層の研究が要望される。しかし,ほんとうに認識過程をあぎらかにし,これと指導法とをむすびつけようとするならぱ,このような検査結果の分析だけでなく,もっと多角的な接近法が必要ではあるまいか。413.相田の研究は,やはり昨年から継続中のものであるが,確率学習についての基礎的た実験であり,そうした観点からの意義は十分認められるにしても,教科の心理との関係はやや不明瞭であった。実験方法と解釈についての技術的な質疑が出されたが、この実験結果が,ポーカーチップを用いる,というような簡単な方法によって学習者の動機づけを高め,学習態度をかえさせうることを示すものとすれば,現場の授業にも応用できるのではないかと考えられる。415.植田の研究は,歴史的知識の学習にさいして,テストを予告することは動機づけをたかめ,記憶される量をふやすであろう,という予想のもとに,テスト予告と実施の間隔を問題にしている。この結果,テストの前日に予告する場合がもっとも予告効果が大きく,実施までの期間が長くなるにつれて効果が減ずること,また知能・学力の水準によって予告効果がちがうことがたしかめられた。これに対して,予告期間が長いときには,それに伴なって授業とテストの間隔がながくなる,1度たけのテストでなく,もっと長期的なフォローアップが必要であるなどという方法上の不備が指摘された。また,知能・学力下位群で予告効果がみられないのは,動機づけの問題か,学習能力ややり方のせいか,が論じられた。たしかに,テストは外的た動機づけの方法として有効であろうが,それが真に教育的に有意義なものであるためには,どのように利用されるべきかが考慮されねばならない。416-421.沢田らの共同研究は,「道徳」授業過程を心理学的に分析していく場合の概念的な枠組みと方法,およびそれを用いた3つの授業の分析について報告された。この研究は,授業を分節に分けたり,主観的・印象批評的に評価するだけでなく,教師・生徒の発言を分析カテゴリーによって数量化すること,また,授業過程についての生徒の知覚を質問紙により調査することによって授業過程を総合的にとらえようとするものである。発言分析のカテゴリーは,スナイダーらのカウンセリングプロセスについての分析カテゴリーの影響を受けているが「道徳」授業過程の分析に適するように修正されている。教師と生徒の発言は,おのおのその機能によって形式的に分類されるだけでなく,内容的にもカテゴライズされる。すなわち,自己のことをいっているか,それとも他人のことか,あるいは情緒的な面についての発言がそうでないか、などの観点からも発言分析がおこなわれるのである。このグループによって報告されたところによると,このカテゴリーによって,主観的に異なっていると思われる授業の特徴を,客観的に量化できる,という。また,授業が客観的にどうおこなわれたかをみるだけでなく,これに対する生徒のうけとり方を知る必要があるとして,質問紙調査がおこなわれている。これは,「先生の授業はおもしろいと思いましたか」,「先生の話は、何が問題になっているかはつきりしていましたか」などの15項目を,7段階で評定させるものである。この質問紙によっても,授業の特色をある程度うかびあがらせることができるもh</abst>
- 1962-03-15