高齢者の自己語りと自我同一性との関連 : 語りの構造的整合・一貫性に着目して
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概要
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本研究では,高齢者が自らの過去を回想して述べる自己語りの構造的特質と,自我同一性の様態との関連を明らかにすることを目的とした。65歳以上の健常高齢者30人を対象に,エリクソン心理社会的段階目録の日本版(中西・佐方,1993)の一部を施行して,自我同一性達成度を測定した。また,性格特性語の自己への帰属を過去の経験から例証する課題により,自己語りを得た。そして,構造的な整合・一貫性の観点から,根拠として語られた経験の信悪性を表す特定性,情報量の多寡を表す情報性,主題である性格特性に則していることを表す関連性の3次元に基づき,語りを分析した。その結果,情報性,関連性の2次元において,語りの構造的特質が自我同一性達成度により異なることを見出し,自己語りの構造的特質が自我同一性の様態に関連することが示唆された。なかでも,自我同一性達成度が低い一群の高齢者は,自己の否定的な性格特性について語るに際して,情緒的な明細化が顕著になり,主題との関連性が低い自己語りを構成することが明らかとなった。しかし,自我同一性達成度と,語りの特定性とは関連を見出さず,また,情報性・関連性との間に見出した関連も直線的ではなかった。
- 日本教育心理学会の論文
- 2002-09-30
著者
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