僻地学校の学力差の要因
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
僻地の分校A,Bの国語,算数の学力を標準学力テストによって測定し著るしい差のあることを発見した。別に僻地の学校KとSを対象にして僻地児童の学力差の個人的環境的要因を一般的に研究し9箇の有意味な要因を得た。これらの要因が学力の上と下を弁別する程度に応じて,要因の下位項目に数値をあたえた。9箇の要因の中で特にAとBの間に著るしい差のあるものは,知能勉強時間,家庭の雰囲気,かなりの差のあるものは家庭の教育的関心,家庭の文化的状態,僅かに差のあるものは父の学歴,母の学歴である。これら7箇の要因の綜合点をA,Bの各児童に対して計算すると両校の平均点の間には著るしい差異がみられ,又A,B内の各児童の学力と要因の綜合点の間には密接な関係があった。教育的要因の中どれが僻地学校の学力差の有意味な要因であるかの統計的研先は行わなかったが,両校の施設,教員組織,教育方法,教科外活動を比較すると,その何れにおいてもAがBよりややすぐれていた。以上の事実からこの調査の範囲内ではAとBの学力差は7箇の個人的環境的要因と4箇の教育的要因の差にきすることが出来るようである。尚AとBの学力差は常に有意であったのでなく;過去6カ年の両校出身者の中学1年の成績を比較すると初めの2カ年Aはがすぐれており,後の4カ年には有意差はない。要因の一つである知能を比較すると,初めの2カ年はAがすぐれており後の4カ年はAとBの間に差はない。しかし諸要因の調査が出来ないので7箇の要因によってAとBの間に学力差のなかったことの説明は出来なかった。
- 日本教育心理学会の論文
- 1958-01-15