高齢者の「人生設計課題」における知恵 : 特性の解明及び生活経験との関連
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概要
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本研究では, 日本における高齢者の知恵の特性の解明, 及び知恵と生活経験の関連を明らかにすることを目的とした。実験では, 高齢者と大学生に人間関係の葛藤を主題とする「人生設計課題」を提示し, 発話思考の内容を事実に基づく知識, 手続き的知識, ライフ・スパンの文脈論, 不確実性への処理能力, 価値相対論の5つの観点から評定し, 得点化した。その結果, 高齢者は「ライフ・スパンの文脈論」「不確実性への処理能力」において特に得点が高く, また「手続き的知識」については大学生との間に差が示されなかった。よって, 解決策の提示のほかに, 問題を多方面から捉え, 熟慮することを重視する傾向が, 高齢者の知恵の特徴として挙げられた。一方, 高齢者の知恵と生活経験の関連を検討したところ, 過去に「役職経験があること」及び「経験した職種の数が多いこと」が豊富な「事実に基づく知識」と関連することが示された。また多様な活動に積極的に取り組む高齢者は「ライフ・スパンの文脈論」「不確実性への処理能力」「価値相対論」において成績が優れており, 日常における難題の解決により多くの知恵を働かせていることが明らかになった。
- 2001-06-30