感情に関する認知の個人差 : 感情特性と曖昧刺激における感情の解釈との関連
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概要
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本研究では,人格特性と認知との関連を検討するため,大学生169名を対象に,個人の感情特性と図版刺激における感情情報の解釈との関連について調べた。感情特性の指標として,5つの個別感情(喜び,興味,悲しみ,怒り,恐れ)の日常の経験頻度を尋ねた。また,感情解釈の実験を行う直前に,被験者の感情状態を測定した。感情解釈の課題としては,被験者に,人物の描かれた曖昧な図版を複数枚呈示し,各図版について,状況の解釈を求めた上で登場人物の感情状態を評定するよう求めた。両者の関連を調べたところ,喜びを除く全ての感情特性と,それぞれに対応した感情の解釈との間に,正の相関が認められた。すなわち,被験者は,自分が日頃多く経験する感情を図版の中にも読みとっていた。また,特定の感情(悲しみと怒り,恐れと悲しみ,恐れと怒り)については,感情特性と感情解釈との間に相互に関連が認められた。感情特性と感情解釈の相関は,感情状態の影響を取り除いてもなお認められたことより,感情特性は,感情状態とは独立に個別の感情に関する認知と関連を持っていることが示唆された。
- 1999-12-30