神経症傾向の場に応ずる変化について
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概要
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(1)日本人特に女子大学生は日本人男子大学生, 或は米国男女大学生に比して極めて神経症的傾向を呈する。木田文夫氏が-身心調和の発生と分化は, その人間生活空間の調和のことである。程よい環境の与えられたもの, 求めて見出し得たものは幸であるが, このような人間は多いとは思わない。特に神経質のとよい少青年を広い視野と深い透察のもとによりよく調和に導くことこそ, 一国の文化に課せられた重大な任務であろう。……神経質のとよい少青年は少なくとも一国文化の生みの子である。-と述べているように日本の女子大学生の神経質は日本文化の生んだものと考えることが出来るであろう。閉ざされた諦らめの過去の日本女性ではなく, 更に又独立解放され, 自由に行動し, 思惟する日本女性でもなく, 上記両者の中間帯としての過渡期の文化に生活する現代日本女性の神経症傾向は, 本調査において日本男子大学生, 米国男女大学生と比較して極めて有意の差のあることを見出した。(2)患者, 特に結核患者の隔離と非隔離との被験者群, 団体の身心状態を神経症的傾向の得点平均の差によって見出すことが許されるならば, 本調査において明かに結核患者は隔離されるべきであると推定することが出来るようである。(3)TaylorのAnxiety Test 50項目は臨床学者の意見を採用して作成されたものである。と同時に項目中Negativeな質問項目12個を含んでいる。吾人は日本人に解答し易すくする為と簡単に計算する為に各項目を総てpositiveに改め, 総計25項目に短縮した。(4)閉ざされた領域として刑務所が考えられるであるが, 刑務所にも各種あって, 例えば外界との交渉の多い-看守に守られていはいるが民間の仕事, 土地の整理, 運搬, 田畑作業等, 衆人と接触しながら作業する-囚人と, 完全に外界と遮断されている囚人とによって, その神経症的傾向が異なることが予想されるのであるが, 吾人は前者, 遮断解放の囚人135名の資料のみで後者, 完全に外界から遮断された囚人の資料を入手し得なかった関係上, これ等囚人に関する比較研究は後日に譲ることにした。(5)要するに本調査において, 遮断, 解放並に両者の中間体としての領域に三大別して考慮したのであるが, 得点平均からみて中間帯としての遮断解放の領域に生活する被験者が最も神経症的傾向を示す傾向があるようである。
- 1955-10-15
著者
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